アイオーン -Aeons- |
西暦100年代 及び200年代、草創期にあったキリスト教は、ローマ帝国においてまるで燎原の如く広がるにつれ、当時、台頭しつつあったもう1つの大宗教であるグノーシス主義から激しい競争関係を強いられることになりました。グノーシス主義においては、天使はアイオーンと呼ばれていました。初めアイオーン達は愛や真実といった抽象的な神の性質にすぎなかったのですが、こうした曖昧な神的概念は次第に生き物のような形に「実体化」[擬人化]され、その後問題を引き起こすようになります。 グノーシスの伝説には矛盾したものが多いでが、その中でマルコム・ゴドウィンが引用したひとつの神話によれば、イエス・キリストの実の兄弟であり、神の副摂政であったサタン-エルが神に対して反乱を起こしたことになっています。サタン-エルと彼に追従した天使のうち3分の1が悪行により天から堕ちました。これら悪行を犯した天使達は宇宙の低層部分に落とされ、サタン-エルはそこに神が不在の、悪を基盤にした物質世界を創り上げました。この世界はそれを支配する悪い天使達の意のままになりました。何故そんなことが起きたのでしょうか?悪い天使達が創り上げた世界は神の統治する世界とはあまりにかけ離れた距離にあったため、神はその影響力を行使できなかったのです(グノーシス主義は、物質世界が基本的に悪の性格を持ち、神が不在だという主張をした故に過去何百年にもわたって非難され続けてきました)。しかしこの悪の世界の惨状にも関わらず、現世に住まざるを得ない人間達からも希望の全てが失われたわけではありませんでした。幸いにも人間達はそれぞれの肉体の中に「神の火花」(デイヴアイン・スパーク)を宿しています(神の火花とは、人間は悪のアイオーン達に牛耳られてい現世ではなく、本来善なる創造主と共に天界で過ごすべき住人である、という漠然たる自覚です)。人間が啓発を受けることにより、神から与えられた聖なる霊も自分達の本当の居場所を知って目覚めることになります。覚醒した魂は肉体が滅びた後、至高の存在を目指し、はるか最高の天界にいる善いアイオーン達の所へ行くため、物質世界という牢獄から逃げ出して上へ上へと飛翔します。覚醒した魂のこうした姿を羨む低い天界に位置する悪のアイオーン達は、魂が上の方へ行くのを邪魔しようとします。悪のアイオーン達最終目標は、できるだけ多くの魂を自分達の支配下に置き、悪の物質世界から逃げられないようにしておくことです。実に、現在目に見えない形善と悪のアイオーン達がぶつかり合う「天界の第3次世界大戦」が起きているというわけです。 |