デーポダンジョン

ラムザ達一行は、貿易都市ウォージリスへとやって来ていた。
「俺、ちょっと酒場へ行って来るからさ!」
そういい残して、ディロンが宿を後にした。
(全くよぉ、ラムザのあの顔、見てらんないよなあ。)

そう、まだ記憶に新しい聖ミュロンド寺院での悪夢のような戦い。
あの戦いで、ラムザは実の兄を手にかけてしまった。
みんな努めてそのことに関しては触れないようにしていた。
しかし普段明るいディロンでさえも、ラムザが時折見せる表情を見ているのは辛かった。
そこで、1人宿屋を抜け出して来てしまったのであった。

(まずは酒を1杯頼んで、嫌なことは忘れちまうかなあ。)
そう思って酒場のマスターに酒を注文しようとした時のことである。
酒を飲みながら話し込んでいる男達の会話が耳に入ってきた。
「あの島の財宝伝説って噂じゃなくて本当だったのか?」
「ああ。でもその洞窟には数々のトラップと恐ろしい魔道士が待ち構えているんだってさ。」
「ひえー、それじゃあ俺達には到底無理だな。」
「よっぽどのつわものか無鉄砲な奴しか立ち入らないだろうな。なんせ、明かりさえないっていうからな。」
「で、その洞窟って何て名前だっけ?」
「えーっと、確か、デーポダンジョンとか・・・。」
「おい、違うだろ!ディープダンジョンだ!」
「そうだっけ?まあ、どっちでもいいや!」

(おいおい、こりゃあすごいぜ!こんなお宝が眠っている洞窟があったなんてよ!早速帰って報告だ!)
ディロンは大急ぎで酒場を飛び出すと、宿屋へと戻って行った。

バタンッ!
大きな音をたてて宿屋の入口が開いた。
バタバタバタッ!
「おーい!すごい話を聞いたぜ!みんな聞いてくれよお!」
「何?何なの?ディロン?」
アリシアがディロンの勢いに圧倒されながらも尋ねた。
「そ、それがよぉ。ものすごいお宝が眠っている洞窟が近くの島にあるんだってよ。」
「えっ?本当?」
シーモアが目を輝かせた。
「マジだよぉ。それがさあ、トラップが沢山仕掛けられてあって、怖い魔道士が住んでいるんだってさ。しかも中は真っ暗だと!」
「ええーっ、いやーん。」
アイミィが震えている横で、ディロンとシーモアだけはキラキラと目を輝かせたままである。
「行きましょうよぉ、ラムザ!」
「えっ?」
ずっと亡き兄ザルバッグのことを考えていたのだろう。
ラムザは何が起こっているのか全く理解していないようであった。
「うんもう!ラムザってば!ディロン、もう一度説明してよ。」
「ああ。何でも近くの島にトラップだらけで怖い魔道士が住んでいる洞窟があるんだと。お宝もいっぱい眠っているらしいぜ。」
「でね、でね。あたし達、その洞窟へ行ってみようと思うのよ。」
シーモアが上目遣いにお願い光線を発している。
「んっとよ、ラムザ。兄貴があんなことになって辛いのは分かるけどよ。あのさ、気分転換してみないか?もしかしたらものすごい武器とか防具が手に入るかもしれないしさ。」
「ごめん、みんな。心配かけて。いつまでも僕がこんなんじゃ駄目だよね。分かったよ。行ってみよう。」
「やったあ!」
跳び上がって喜んでいるのはやはりシーモアであった。

「ねえ、ここなの?」
「あ・・ああ。あ、憧れのデーポダンジョン!」
ディロンは感激に震えるあまり、洞窟の名前を間違えていることにも気付かない。
「へえー、デーポダンジョンっていうの。面白い名前ね。」
「ああー、デーポダンジョン!」
「じゃあ入るよ。中は真っ暗らしいし、何が待ち構えているか分からない。みんな、気をつけて。」
「はーい!」

中に入ってみると、辺りはしーんと静まりかえっていた。
「きゃあー!」
「どうしたっ、シーモア!大丈夫か?」
心配して声を掛けたディロンだが・・・。
「きゃあー!ほんとに真っ暗ー、お化け屋敷よぉ!すごいわあ!」
当のシーモアはおおはしゃぎ。
がくっ。
思わず膝カックンになってしまうディロンであった。

やはり皆が恐れる洞窟だけあって、トラップがあちこちに仕掛けられているうえ、モンスターの強さも桁外れだった。
それでもめげない人物が1人。
「もっと素敵なアイテム目指して頑張るわあ!」
勿論シーモアである。
「さあて!どんどんやっつけるわよぉ。早くクリスタルになぁれ!」
(おいおい、マジかよ。こいつ、いつもにも増して強すぎ!)
はしゃぎまくるシーモアの隣りには、何だか疲れ果てているディロンの姿があった。
「きゃあー!クリスタルよぉ。きれーい!光ってるわあ。」
(いい加減、シーモアの黄色い声、何とかなんねぇかなあ。)
ディロンがそう考えた途端、またもやシーモアの黄色い悲鳴が・・・。
「きゃあー!豚さんよぉ。かわいい!」
「あ、あれは豚さんじゃなくってポーキーだと思うぞ、俺は・・・。」

デーポダンジョン、もといディープダンジョンで大量のお宝をゲットしたラムザ達一行。
めでたしめでたし・・・。

と言いたいところだが・・・。
(俺、もう二度とシーモアには秘密はばらさねえぞ!)
そう固く決心するディロンだけが1人、かつてないほどの疲労を味わっていた。

最初からギャグ路線で書き始めたんですが・・・。
シーモアの暴走ぶりはいつものことなので良いのですが、思った以上にディロンが活躍、というか主役になってしまっているような・・・。
出だしを見るとシリアス話のようなのに・・・。
文章かなり滅茶苦茶ですね。(^^;)
最近シリアス話ばかり書いているので、たまにはこういう話も良いかと・・・。(笑)

2002.01.27


FFT