誕生日
私が元の世界へ戻って来て3ヶ月が経った。 京での生活は私にとって不安と驚きの連続だった。 でも藤姫や八葉のみんながいてくれたから・・・。 あの頃の様子が今でもはっきりと思い起こされる・・・。 「よう、あかね。どうしたんだ?ぼうっとしちゃって。」 考え事をしていた私は、その声に我に返った。 「あっ、イノリくん。何でもないの。ちょっと京でのことを思い出しちゃって。」 「そうか。何だか変な感じだよな。こうしてオレがここにあかねと一緒にいるなんてよ。」 「そうだね。でも、本当に良かったの?イノリくん。お姉さんと離れ離れになっちゃって。」 「!!!何言ってるんだよ、あかね。オレがここに来ちゃ迷惑だったのかよ!!!」 「ううん。そうじゃないの。本当にイノリくんが私と一緒に来てくれて嬉しかった。でも、イノリくんにとってお姉さんは大切な人でしょ?」 「前にも言ったよな。姉ちゃんには姉ちゃんの生活があるって。いいんだ。オレはあかねと一緒に来るって決めたんだから。」 「・・・ありがとう。」 「・・・な、なんだよ、あらたまって・・・。照れるじゃん。」 「それでね、天真先輩。昨日はボク、体育の授業で褒められたんだ。やっぱり京での経験のお陰かな。」 「それは良かったな。詩紋。」 「うん。」 「あれ?おい、詩紋。あれってあかねとイノリじゃないのか?」 「あっ、ほんとだ。」 「おーい、あかね、イノリ!」 「な、なんだよ、邪魔・・・すんなよな。」 「ご、ごめんね、イノリくん。天真先輩、行こうよ。邪魔しちゃ悪いよ。」 「ははははっ、じゃあな、またなっ!」 「もう、天真くんたら・・・。」 「と、ところでさ、あかね。今日はお前の誕生日だったよな。」 「あっ、そういえば・・・。すっかり忘れてた。」 「こっちの世界では誕生日にはぷれぜんととかってのを贈るんだよな。」 「えっ?」 「オ、オレさ。あかねに何を贈ったらいいのかよく分かんなかったんだけど、一応、これを作ってみたんだ。」 「何?」 イノリが照れながら差し出した物は、木彫りの人形だった。 「こ、これイノリくんが?」 「オレさ、今まで刀ばっかり作ってたじゃん。だからこういうの、慣れてなくてさ・・・。」 「ううん。さすがイノリくん。とっても上手にできてるよ。器用なんだね。それになんかこの人形、イノリくんに似てる。」 「そ、そうか?」 「うん。どうもありがとう。」 そう言うとあかねはそっとイノリの頬に唇を触れさせた。 「・・・!!!」 「イノリくん、大好き!」 「よ、よせよ。こんなところで・・・。照れるじゃん。」 「ふふふっ。」 「ちょ、ちょっと、やめようよ、天真先輩。」 「ついにやっちまったな。これでしばらくイノリをからかえるぞ。」 「もうー、天真先輩ったらー。」 幸せな2人の様子を覗いていた輩がその後、しばらくイノリをからかっていたのは言うまでもない。 |
ああ、駄目ですねー。しっとりと終わらせればいいのに、邪魔な輩が・・・。(^-^;
こんなはずではなかったのに・・・。(笑)
イノリの「照れるじゃん」が気に入ってついつい使ってしまう私・・・。
2000.07.09
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