言霊

異世界から来た人間だからだろうか。
神子は時々わけの分からないことを言う。
初めは神子のたわごとと思って気にもとめていなかった。
しかしいつしか神子の言葉は私を呪縛するようになっていった。
いや、呪縛というのとは違うのかもしれない。
だが、神子の言葉は私の体の奥深いところにまで浸透していくようになった。
このような感覚は初めてのことで、不快だった・・・はずだった。
不快・・・なのか?
違う・・・。
何だか温かい。
心がくすぐられるような・・・。
もし、私に心というものが存在すれば・・・の話だが・・・。
神子の言葉は私にとっては言霊だった。
理解はできぬが、私の心を捕らえて離さない。
強い言霊だった。

神子はくるくるとよく表情の変わる人間だった。
人ならぬ身の私とは正反対の・・・。
時々神子は私の言葉を咎めた。
何故咎められるのか全く分からなかった。
何かおかしなことを言っているのだろうか。
分からない・・・。
リカイデキナイ・・・。
私は人間ではないのだから・・・。
当然だ。
私には何か欠けているものがあるのだろう。
気にすることはない。
八葉としての任務には何の問題もない。

神子の表情が頭から離れなくなった。
京の穢れを察知できない。
八葉としての務めを全うできない。
そんな馬鹿な・・・。
私は清明様の一番の弟子であったはずだ。
清明様によって造られたのだから・・・。
私が任務を全うできなければ清明様の名に傷がつく。
神子のせいだ。
いや、違う。
私がいけないのだ。
そうだ。神子の言葉を聞かなければいい。
必要最低限の会話だけをかわしていればいいのだ。

神子が時折寂しそうな表情を見せるようになった。
何故だ。
以前はあんなに笑顔を浮かべていたのに・・・。
(泰明さん、私がいけないの?)
辛そうな表情を浮かべて神子が言った。
違う。
神子は何も悪くない。
悪いのは私だ。
どうすればいい。
この気持ちは何だ。
神子に辛そうな表情をさせたくない。

神子の気持ちを理解したい。
神子に近付きたい。
イケナイ。
このままでは八葉としての務めが・・・。
神子・・・。
神子・・・。
私を助けてくれ・・・。

こんな私は穢れている。
ケガレテイル・・・・。

どうしようもない気持ちにかられ、私は京から姿を消した・・・。

ひたすら暗い・・・。

泰明の独白です。

わけ分からないです。(^-^;

あかねと出会って変わっていく自分に苦悩する泰明。

そんな泰明の気持ちを書いてみたつもりです。

2000.08.16


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