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守りたいもの

「ちょっと、スカサハ!それは私の剣だからね!触らないでよっ!」

「ごめん、ラクチェ。でもちょっとぐらい触らせてくれたって・・・。」

「だめったら、だめ!」

「ちぇっ、分かったよ。」

スカサハはふてくされて側に置いてあった本を手に取った。

「じゃあ、ちょっと出かけてくるね。」

「おい、どこ行くんだよ、ラクチェ。」

「セリス様、最近ちょっと元気ないみたいだから、森へ行って綺麗な花でも摘んできてあげようかと思って・・・。」

「シャナン様に言ってからの方がいいんじゃないか?」

「大丈夫。だってすぐ近くだし、シャナン様は当分帰って来られないでしょ?待っている時間が勿体無いもん。」

ラクチェはさっさと着替えを済ますと森の中へと飛び出して行った。

全く、双子なのに何でこうも違うんだろうな。

シャナン様の話では、ラクチェは母様にそっくりなんだそうだ。

女だてらに男性顔負けの剣の使い手だったそうだ。

僕には母様の記憶はないけど、イザークの王女であった母様はシャナン様の叔母にあたるらしい。

父様も、名うての剣士だったと聞いている。

ラクチェは母様の剣さばきにそっくりなんだそうだ。

でも僕は・・・。

男として情けない。

ラクチェには昔からかなわなかった。

 

「スカサハは優しすぎるんだよ、きっと。」

セリス様はある時こうおっしゃって下さった。

「そうだな、スカサハも本当に守りたいもののためだったら強くなれるさ。」

シャナン様もそうおっしゃって下さったけど・・・。

そうだ、僕は人を傷つけるのが怖いんだ。

 

まだ僕が小さかった時に、誤ってラクチェに傷を負わせてしまったことがあった。

僕が好奇心に負けて、シャナン様の剣を振り回したりしたから・・・。

「大丈夫だよ、スカサハ。私、母様に似て強いんだから。」

ラクチェはにっこりと笑って言ってくれたけど、あの後傷口から菌が入ってラクチェは1週間も寝込む羽目になった。

あの時のような思いはもうしたくない。

 

ふと、窓の外に目をやると、辺りは暗くなりかけていた。

「ラクチェ、遅いな。」

すぐ近くへ行くと言っていた。

なのに、この時間になってもまだ帰って来ない。

急に不安が沸き起こってきた。

このままでは森はすっかり暗くなってしまう。

僕は松明を持つと、慌てて外へと飛び出して行った。

 

「ウォーーーーン!」

 

どこかで獣の吼えるような声が聞こえる。

 

僕はブルッと身を震わせると、意を決して森の中へと足を踏み入れた。

 

ガサッ、ガサガサッ・・・。

草木を掻き分けながら進んで行く。

 

「おーい!ラクチェーッ!いるのかー?いたら返事をしてくれーっ!」

僕は精一杯大声を張り上げながら進んで行った。

「ラクチェーッ!」

 

「グルルルルルルル・・・。」

ひときわ大きな唸り声が聞こえてきた。

 

「きゃあぁぁぁぁっ!」

ラクチェの声だ。

「ラクチェッ!」

 

僕は急いで声のする方へと飛び出した。

広い岩場でラクチェがうずくまっている。

「ラクチェぇぇっ!!」

僕は夢中で獣に飛びかかった。

夢中でどうしたのか覚えていない。

しかし僕は、たいまつで獣に襲いかかっていたらしい。

 

ラクチェが目を見張る。

スカサハは体から光を放ちながら獣を真っ二つに斬り裂いていた。

 

「大丈夫か?ラクチェ。」

「うん。怖かった・・・よぉ・・・。」

スカサハはラクチェをそっと抱きしめた。

気の強い男勝りの彼女も、今はたった一人の妹にすぎなかった。

スカサハの胸に顔をうずめるラクチェの瞳には涙が溢れていた。

 

「全く、剣も持たずに出かけるとは・・・。」

「ごめんなさい、シャナン様。」

「でも大事に至らなくて良かったですな。」

 

後から知ったことだが、僕があの時思いがけずに使った技は父様譲りの技だったらしい。

きっと父様と母様が僕達を見守っていてくれたんだ。

人を傷つけるのは怖いが、大切なものが傷つくのはもっと嫌だ。

僕はこれからもっともっと鍛錬を積んで強くなる。

大切なものを傷つけないために・・・。

僕達のような孤児を、これ以上増やさないために・・・。

世の中に平和が訪れる日のために・・・。


ラクチェとスカサハの二人を書いてみたくなって・・・。
スカサハくんには頑張ってもらいたい!
父親誰だか分かりますか?(笑)
私はこのカップリングが好きなんです〜。

実はこれ、会社で書いてました。(^^;)


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