超人モーゼに授けられたカバラの叡智
今回は何だか難しい話ですが、興味のある方は読んでみて下さいね。
カバラ(KABBALAH)とはヘブライ語で、「伝承」を意味します。その秘法が直接に神から人へ、師から弟子へと伝えられていったためです。
最初に神からカバラの叡智を授かったのは、数々の奇跡で知られる超人モーゼです。イスラエル人に十戒を授け、エジプト脱出に際しては大海を真っ二つに裂いたと言われるあのモーゼによって、カバラはこの世にもたらされたのです。
その時モーゼは、シナイ山頂にいました。山は荒れ果て、強い風が彼の法衣を揺らしていました。長髪と髭で覆われたその顔は、長期にわたる苦行で随分とやつれてはいましたが、目だけは異様にギラついていました。
「神よ!我にカバラの全てをお授け下さい!」
モーゼは天に向かって何度も叫び、祈りました。しかし神は、いくらモーゼといえども、この禁断の叡智を授けて良いものかどうか、まるでためらうかのように沈黙したままでした。
カバラの教えはあまりにも巨大で、深遠です。宇宙の全てを包含し、象徴と体系とを駆使して一切の謎を解くマクロ的大胆さ。人間の内なる光の点を探っていくミクロ的精緻さ。複雑怪奇で錯綜しているかと思うと、人を小馬鹿にするかのような単純な原理が顔を出します。つかみどころがないかと思うと、頭頂にハンマーを振り下ろされたような衝撃を受けます。
そして、モーゼにもついにその衝撃がやってきました。”神”が姿を現したのです。彼は40日間にわたって、神から直接カバラの秘伝を受けたのでした。
空から宇宙人のように”神”が降りて来て抗議をしたのか、あるいは天が裂けてそこから目も眩むばかりの光が射し込み、神の声が聞こえてきたのか、その辺りはよく分かりませんが、とにかくすさまじい知恵を授かり、モーゼは圧倒されてしまいました。
このようにして誕生したカバラとは、一体どのような教えなのでしょうか。これからその一端をかいま見ることにしましょう。
カバラによると、神は自ら”セフィロト”と呼ばれる光を放ち、この宇宙を創造したとされます。この光は全部で10個あり、「生命の樹」と呼ばれる象徴的体系図として描かれています。これは後に魔術師達がヘブライ文字や数値、タロットカード等と対応させて、一種のマンダラとして扱われるようになりました。
次に神は、この生命の樹を4つ造り、宇宙を4つの界層に分けました。
カバラの宇宙階層 |
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セフィロト |
ケテル (王冠) |
コクマー (知恵) |
ビナー (理解) |
ケセド (慈悲) |
ゲブラー (峻厳) |
ティファレト (美) |
ネツァー (勝利) |
ホド (栄光) |
イエソド (基礎) |
マルクト (王国) |
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数 |
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
アツィルト (神性界) |
神の属性 | エヘイエ (在りて在るもの) |
イェホバ (存在の原質) |
イェホバ・エロヒム (神のなかの神) |
エル (創造主) |
エロヒム・ギボール (力ある神) |
エロアー・ヴァダート (強き神) |
イェホバ・ツァボアート (万軍の主) |
エロヒム・ツァボアート (万軍の主たる神) |
シャッダイ・エル・カイ (全能) |
アドナイ・メレク (神) |
ベリアー (創造界) |
大天使 | メタトロン (面前の天使) |
ラツィエル (神の使い) |
ツァフキエル (神の観照) |
ツァドキエル (神の審判) |
サマエル (神の峻厳) |
ミカエル (神に似たもの) |
ハニエル (神の恩寵) |
ラファエル (天界の医師) |
ガブリエル (人神) |
サンダルフォン (救世主) |
イェツィラー (形成界) |
天使 | カイオト・ハ・カドシュ (聖獣) |
オルファニム (車輪) |
アラリム (力強き者) |
カシマリム (輝けるもの) |
セラフィム (燃える蛇) |
メラキム (王) |
エロヒム (神) |
ベン・エロヒム (神の子) |
ケルビム (子の席) |
イシム (正しき人間の魂) |
アッシャー (物質界) |
悪魔 | タウミエル (神の分身) |
カイギディエル (じゃまする者) |
サタリアル (神の隠匿) |
ガムキコット (もめごと屋) |
ゴラブ (放火魔) |
トガリニ (口論屋) |
ハラブ・セラップ (剥奪者) |
サマエル (騒動屋) |
ガマリエル (猥褻) |
ナヘモト (不浄) |
最上階はアツィルト(神性界)と呼ばれ、全てが神の属性である完全な世界です。
その下はベリアー(創造界)で、ここには大天使がいます。
次にイェツィラー(形成界)が存在し、ここには天使がいます。
そして最後に、私達の住むアッシャー(物質界)があります。ここにいるのは悪魔です。天使も悪魔も、生命の樹の10のセフィロトと対応させて位置づけられています。
最上界のアツィルトに、神は自らの姿に似せて”神人(しんじん)”を造りました。これを「アダム・カドモン」と呼びます。
この神人は完全な存在であり、意志、知性、情緒、活動力にわたって完璧であり、至福に満たされています。
実はこのアダム・カドモンこそ、私達の魂の集合体(というよりも合一体)なのです。私達は魂のレベルでは皆、ひとつなのです。兄弟どころか、全てがまさに”自分”なのです。
ところがベリアーに降りると、このひとつの魂は個々に分裂してしまいます。ここで初めて自分以外の人、即ち”他人”が生じることになります。つまり、魂は個性を持って生きるようになるわけです。
更にイェツィラーへ下ると、ここで初めて男性と女性に分裂します。聖書ではこの世界を「エデンの園」と名付けています。
そしてこの現世であるアッシャーに来ると、魂は肉体という不自由な衣をまとうことになり、喜怒哀楽を繰り返して生きているのです。