京劇の演技術は全て様式化された型を持っており、これを一般に「程式」と呼び習わしています。 このうち体の動きに関わるものは「程式動作」と呼ばれますが、多くの演目に共通して使われるため、皆さんもそのいくつかを既に目にされていることと思います。 今回はその「程式動作」のうちの代表的なものをピックアップしてご紹介しましょう。 「起覇」は『桃滑車』や『鉄篭山』など、靠を身に着けた武将が登場する演目で多用される舞踊的な動作です。 出陣の前に装束を整え、ウォーミングアップをするという意味が込められているので、冠を直したり手足を伸ばしたりといった具体的な動作から組み立てられていますが、実際には亮相(見得)や翻身、雲手などの京劇特有の技法も織りまぜられています。 役柄や人物の性格、あるいは劇中の重要度、更に演じる俳優の個性から、起覇には様々なバリエーションがありますが、個々の動作はほぼ共通で、猛々しい武将の威風を表現しつつ、重い「靠」を着て激しい動作をこなす俳優の芸の見せ所です。 ちなみに以前大連京劇団の訪日公演で演じられた『甘寧百騎劫魏営』の冒頭で甘寧が演じたものも、この起覇です。 甘寧は髭をつけているので、これを左右に降り回したり跳ね上げたりする芸が起覇の中に組み込まれています。 |