走辺つぉうぴえん


京劇はお芝居の中の広大な空間の拡がりを、限られた舞台空間に俳優自身の演技によって表現します。
何百キロという道のりも、円を描いて舞台をひと回りすれば、芝居の中ではそれだけの距離を移動したということになってしまいます。
「走辺」はこうした約束ごとをそのまま芸の見せ場としたもので道行き、進軍、巡邏など、様々な「移動」を表現する程式動作の1つです。
一般には道の端(辺)を行く(走)、隠密行動の場合が多くなっています。
主に武戯で使われますが、代表的なものが『三岔口』の冒頭、冤罪で島流しとなった焦賛を追って夕暮れの道をひた走る、任堂恵の走辺です。
掃堂、旋子、など様々な技巧が使われますが、起覇ちいぱぁと同様、そうした技巧の中にも焦賛を秘密裏に守る任堂恵の心理や武勇が表現されています。バリエーションの種類は起覇よりも豊富で『盗仙草』で鶴童、鹿童が歌を歌いながら舞う「響辺」、敵陣へと進軍して行く様を表した『挑滑車』の「頭場辺」など、様々な形があります。

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