絆1
「待てっ、天真。落ち着け!」 「落ち着いてなんていられるかよ!蘭は俺の妹なんだぞ!」 「天真くん・・・。」 「どけよ、あかね!」 「あっ!」 「神子殿、大丈夫ですか!?」 「うん、平気。ちょっと転んだだけだから。それより天真くんが・・・。」 「後を追いますか?」 「うん、今の天真くんは周りが見えていないから・・・。」 私と頼久さんは1人でランを探しに行った天真くんを追うことにした。 事のいきさつはこうだった。 「何だって?蘭を見たって言うのか?」 「うん、昨日頼久さんと案朱に行った時に・・・。」 「何で連れ戻さなかったんだよ。」 「連れ戻そうとしたんだけど、消えちゃって。何だかとても悲しそうだった。」 「俺は行くぜ!妹を、蘭を連れ戻しに・・・。」 「待って、天真くん。もうきっと蘭は案朱にはいないよ。またきっと会えるから、機会を待とうよ。」 「待ってなんていられるか!蘭はずっと鬼に操られているんだろ。蘭は俺の妹だ。京とも鬼とも何の関係もない!」 「でも・・・。」 「あれは、神子殿と天真?何か言い争いをしているようだが・・・。」 「神子殿、どうなさいました?」 「あっ、頼久さん。お願い、天真くんを止めて!」 「何だよ、邪魔するなよな、頼久!」 「一体どういうことなのですか?」 「天真くんが、ランの所へ行くって言うの。でも今どこにいるかなんて分からないのに。それに1人じゃ危険だよ。」 「うるさいっ!お前に俺の気持ちなんて分かるもんかっ。兄弟なんていないくせにっ!」 「・・・・・・。」 「天真、神子殿に対して無礼なことを申すな!」 「いいの、頼久さん。確かに私には兄弟なんていない。天真くんの気持ちを全く同じように理解することはできないかもしれない。でも、私にも大切な仲間がいるんだよ。天真くんや頼久さんや藤姫や、八葉のみんな。そして京の人達が・・・。みんなを守りたいっていう気持ちは変わらないと思う。」 「神子殿・・・。」 「すまない。言い過ぎた。でもそれとこれとは別だ。俺は蘭を探しに行くぜ。」 天真くんは誰よりも妹さんを大切に思っていた。 それは痛いほどに理解できる。 でも、今の天真くんを1人にしては危険な気がする。 「行こう、頼久さん。」 「はい、神子殿。お供致します。」 「はあっ、はあっ。」 「大丈夫ですか?神子殿。少し休まれた方が・・・。」 「平気よ、それより天真くんは案朱に行ったのかな?あれ・・・?」 (シャ・・・ン シャ・・・ン) (これは、鈴の音だ。いつも私の中から聴こえる・・・。何?この景色は・・・北山?北山へ行けと言うのね。) 「・・・・・・殿。」 「神子殿。」 「・・・・・っ!!」 「あっ、頼久さん。」 「どうなさいました?どこか痛むのですか?」 「ううん、違うの。頼久さん、北山へ行きましょう。」 「いきなりどうなさったのですか?」 「何だか北山へ行かなくてはいけない気がするの。急ごう!」 「あっ、神子殿・・・。」 |
東の札入手後、まだ青龍の解放はしていない頃の話のつもりです。
ちょっと長めになってしまったので、前編と後編を分けてみました。
この後とっても恥ずかしい展開が待っています。
自分で書いていて滅茶苦茶恥ずかしかったです。(^-^;
2000.07.22
◆物語へ◆