タリスの王女
「マルス王子、タリス城からシーダ様が来られました。」 ジェイガンの報告にマルスは驚きを隠せなかった。 「どうしたんだ!シーダ。城で何かあったのか?」 「マルス様、会えて良かった。ガルダの海賊が突然襲ってきたの。お城も占領されて、大勢の人が殺されたわ。お願い!お父様を助けて。」 シーダは今にも泣き出しそうであった。 マルスは彼女を勇気付けるように優しく言った。 大丈夫だよ、シーダ。この砦にはアリティアの勇敢な騎士達がいる。海賊なんかに負けることはないさ。さあ、僕と一緒にタリスの城へ行こう。」 マルスはこれまで散々タリスで世話になっていたのだ。 シーダにもどれだけ力付けられていたことか。 今度は自分が彼らの力になる番だ。 そう決心して、シーダと共にタリス城を目指した。 「私も戦います。」 気丈にもシーダはペガサスを操って上空からガルダ兵に攻撃を仕掛けた。 敵も反撃するが、素早いペガサスの動きの方が上手だった。 シーダは攻撃をうまくかわし、反対に相手を倒した。 「この辺りの村は盗賊が狙ってるわ。盗賊くらいなら私でも何とかなるから、マルス様達は先を急いで。私も後から必ず行くから。」 「分かった。くれぐれも無理はしないで。」 「はい。」 近くの村の村長は、アリティア軍を手放しで喜んで迎えてくれた。 「マルス王子、よくお出で下さいました。ここに、村人達が集めた5000ゴールドの金貨があります。これで装備を整えて、ガルダの海賊からこの国をお救い下さい。」 「分かりました。ご助力感謝致します。」 「まずは情報を仕入れることが必要でしょう。」 ジェイガンの提案で、マルス達は近くの民家で話を聞いて回ることにした。 「傷ついたら、近くに砦があるのでそこで休めば良いそうです。」 ドーガが報告した。 「それは助かるな。」 「タリス城まですんなり進めるとは思えません。武器を調達する必要があるでしょう。」 「そうだね。」 「手槍は少し割高ですが、離れた所にいる敵にも攻撃できますから便利ですよ。」 「じゃあ、カインに買い物をお願いできるかな?」 「はい。では足を活かして、購入した武器を皆に配ります。」 「頼んだよ。」 アベルが近付いて来た。 「村は、王子のために門を開いて待っているそうです。早く訪ねてやった方が良いでしょう。」 情報を入手したアリティア軍は、タリス城への進軍を始めた。 「行くぞ!」 ドーガが鉄の槍でガルダ兵に攻撃を仕掛けた。 鉄の斧を持った敵が反撃する。 ゴードンは離れた所から鉄の弓で攻撃を仕掛けた。 「シーダ様、空を飛ぶ物は弓に狙われると危険です。お気を付けて。」 「ありがとう、ゴードン。気を付けるわ。」 「たあっ!」 シーダは必殺の一撃でガルダ兵を倒した。 「シーダ様、やりますな。」 「うん。ペガサスの素早さをうまく活かして戦っている。」 ドーガ、ゴードン、シーダは敵と応戦している。 マルスも鉄の剣でガルダ兵に攻撃を仕掛けた。 武器を皆に配り終わったカインも、戦闘に参加する。 「はっ!」 カインと同期のアベルも馬を駆り、鉄の槍で攻撃を仕掛けた。 「くっ。」 戦闘を繰り返すにつれて傷が増えていく。 「アベル、砦で休んでくれ。」 「しかし、マルス様。」 「今は少しでも戦力が惜しいんだ。このまま君に何かあってからでは遅い。」 「分かりました。少しだけ休ませて頂きます。傷の手当てが終わったら、すぐに追いつきます。」 アリティア軍は、タリス城近くの村へと迫っていた。 一行は村を訪れた。 「えっ、あなたがアリティアの王子様!お会いできるなんて、まるで夢みたい・・・。あの・・この傷薬は私のささやかな気持ちです。どうか受け取って下さい。」 そう言って1人の少女がマルスに傷薬を手渡した。 「ありがとうございます。助かります。」 「いえ、これくらいしか私にできることはありませんから。どうか、お気を付けて。」 「マルス様、アカネイアのニーナ王女が、オレルアンのハーディン様と共に、オレルアンに攻め込んで来たドルーア帝国軍と戦っているそうです。苦戦しているらしいわ。」 「ではオレルアンにも急がないといけないね。」 「マルス様、重要な情報を入手しました。」 ジェイガンが報告を始めた。 「ガルダというのは、タリス島の西にある港町ですが、今はゴメスという男が支配していて、海賊の巣窟となっています。」 「では、ガルダにも救援に向かわないといけないね。」 「そうですね。タリスを取り戻したらガルダへ向かわれてはいかがでしょう。」 「そうしよう、ジェイガン。」 アリティア軍は遂にタリス城へと辿り着いた。 「まずは城の守りを手薄にしなければなりません。カイン、ドーガ、アベルの3人を先にやりましょう。」 「カイン、ドーガ、アベル、危険な任務だけれど、頼めるかい?」 「はい、勿論です。」 3人は迷うことなく答えた。 「やっ。」 キィン! キィン! 辺りに鉄のぶつかり合う音が響き渡る。 「守りを固める敵兵は倒しました!」 ドーガが叫ぶと、引き続いてアベルが最後の1人に突き掛かった。 「何・・アリティア兵だと!?こんな奴らになめられちゃあ、俺達海賊の名がすたる!俺はガザックだ!」 「たあっ!」 アベルの攻撃はかわされ、逆にガザックの反撃を受けてしまった。 「・・死ね!」 「くっ。」 「僕がやります!」 後から追いついたゴードンが、鉄の弓でガザックに狙いを定めた。 シュンッ! 矢は見事にガザックを射抜いた。 「ううっ・・・よくも・・・。」 ガザックはその場にばたりと倒れた。 「タリス王、ご無事ですか?」 タリス王は怪我一つなく、思ったよりも元気そうだった。 「お父様、良かった・・・。」 「おお、シーダも無事だったか。」 「マルス様達が助けて下さいました。」 「おお、マルス王子。よく無事にここまで参られた。お礼を申し上げますぞ。」 「いいえ、陛下がご無事で何よりです。お名残惜しいですが、私達はこれからオレルアンに向かいます。」 「そうか・・いよいよオレルアンに旅立たれるのか。ならば、わしからもわずかじゃが兵をお出ししよう。隊長のオグマを始め、いずれも勇敢な戦士達。きっとお役に立つであろう。」 「ありがとうございます。」 「それともう一つ大切なことがあるゆえ、ご忠告申し上げる。これから王子が行かれる先々には、ドルーア帝国を憎む多くの人達がいるはずだ。村に隠れてる者や敵に捕らわれている者、また仕方なくドルーア帝国に味方している者もいる。そういった人達を捜し出して共に戦うことが大切なのじゃ。分かったの、マルス王子・・・。」 「はい。」 「さあ、時は来た!決して無理はされぬよう、心して旅立たれよ。」 |