プロローグ |
世界にその名を轟かせている飛空艇、赤い翼。 その赤い翼が上空を飛んでいる。 1人の兵士が若き隊長に向かって声を掛ける。 「セシル隊長!間もなくバロンに着きます!」 「ああ・・・・。」 しかし返事を返した隊長の顔色はどこか優れない。 その様子にいち早く気付いた兵士達がひそひそと言葉を交わす。 「やはり隊長も・・・・。」 「いくら命令とはいえ・・・・。」 「罪もない人からクリスタルを・・・・。」 魔導師の村ミシディアに辿り着いた赤い翼の兵士達が、必死でクリスタルを守ろうとしている魔導師達を次々と虐殺していく。 そして目的の品であるミシディアのクリスタルを無理矢理奪い去って行った。 赤い翼は一路、故郷であるバロン王国へと向かっていた。 勝利を収めたにも関わらず、艦内には重苦しい雰囲気がたちこめていた。 たまらずに1人の兵士が叫ぶ。 「我々赤い翼は、誇り高き飛空艇団!か弱い者から略奪など!」 「やめるんだ!」 隊長のセシルがどこか辛そうな顔をしながら兵士を制する。 しかし、誰もが先の兵士と同じ気持ちであったのだろう。 次々と兵士達が言葉を発する。 「しかし、隊長!」 「無抵抗な魔導師達から略奪するなんて!」 セシルは感情を持たない人形のような瞳で再び皆を制するように言った。 「いいか、みんな!クリスタルは我がバロン国の繁栄のため、どうしても必要だ。ミシディアの者達はクリスタルの秘密を知りすぎているとの、陛下のご判断だ。我々はバロン国飛空艇団、バロンの赤い翼だ!陛下の命令は絶対なのだ・・・・。」 「隊長・・・・。」 セシルの気持ちが痛いほど分かっている兵士が呟く。 しかしその場の雰囲気を打ち壊すように激しい声が突如、辺りに響いた。 「隊長、魔物が!」 途端にセシルは先程とは打って変わったように、よく通る声で命令を発した。 「総員、戦闘配備!」 空中に3匹のフローターボール出現した。 しかしすぐに別のモンスターが姿を現す。 「ぐわっ!」 「大丈夫か?」 攻撃を受けた兵士にセシルが声を掛ける。 「まだ来ます!」 「くそっ!」 呟いたセシルの前に1匹のズーが出現した。 「みんな無事か?」 一息ついたセシルが兵士達に声を掛ける。 総員、セシルの元に急いで集まって来た。 「はい!」 「しかし近頃、魔物の数が・・・・。」 「確かに、あまりに多すぎる。」 兵士達が次々と最近の異変についての意見を口にする。 「何かが・・・・起ころうとしているのか?」 セシルは漠然とした不安を覚えながら言った。 「バロンに到着しました!」 兵士の声に我に返ったセシルは命令を発した。 「よし、着陸だ。」 兵士達は素早く着陸準備にかかった。 - 完 - |