バート商会


とある一室で、ムスタディオがゆっくりと語り始めた。
機工士ムスタディオ 「・・・やつらはバート商会に雇われたごろつきどもさ。」
騎士アグリアス 「バート商会?貿易商として有名な、あのバート商会?」
機工士ムスタディオ 「知っているのか?だが、ただの貿易商じゃないぜ。裏では阿片の密輸から奴隷の売買まで、悪どいことを手広くやっている犯罪組織なのさ、バート商会は。」
剣士ラムザ 「そんな奴らに何故、追われていたんだい?」
機工士ムスタディオ 「・・・オレ達が何で機工士って呼ばれてるか知っているかい?」
問われたラムザは、首を横に振った。
騎士アグリアス 「機工都市ゴーグの地下には、”失われた文明”が遺されているそうだな・・・。聖アジョラがまだこの世にいた時代、空には無数の飛空艇が浮かび、街には機械仕掛けの人間がいたという。しかし、時代の流れと共にそうして技術は失われ、今では本当にそんな技術があったのかどうかすら不明だ。」
機工士ムスタディオ 「でも、そうした文明があったのは確かなんだよ。ゴーグの地下には、飛空艇の残骸や得体の知れない機械の破片が沢山埋まっているんだ。オレ達機工士は、そうした”過去の遺産”を復元しようとしている技術者なのさ。」
剣士ラムザ 「さっきの戦いで、君が使ったそのヘンなモノが機械なのか?」
機工士ムスタディオ 「ああ、これかい?これは『銃』と呼ばれているモノで、火薬を使って金属の『弾』を飛ばし、相手をやっつける武器なんだ。こんなのは一番シンプルなもので、昔は『魔法』を詰めて打ち出すこともできたらしい・・・。」
剣士ラムザ 「ふ〜ん・・・。」
騎士アグリアス 「お前がバート商会に追われている理由は何だ?」
機工士ムスタディオ 「・・・あんた達はドラクロワ枢機卿に会いに行くと言っていたな。枢機卿は五十年戦争で戦った英雄だ。ライオネルの人間は今でも枢機卿を英雄として尊敬している・・・。オレの親父も同じだ。この混乱した畏国をまとめられるのは、枢機卿だけだって話している。枢機卿だったらあんた達の頼みを聞き届けて下さることだろう。お姫様はもう安心さ。」
騎士アグリアス 「・・・何が言いたい?」
機工士ムスタディオ 「一緒に連れて行ってくれないか?オレも枢機卿に会いたいんだ。」
騎士アグリアス 「何故だ?」
機工士ムスタディオ 「親父を助けるためだ!バート商会に囚われた親父を助けるには、枢機卿のお力を借りるしかないんだ!でも、ただの機工士のオレなんかに枢機卿は会ってくれないだろ?お願いだ。連れて行ってくれ!」
騎士アグリアス 「だから、お前が追われている理由は何だと聞いている!」
するとムスタディオは俯いてしまった。
機工士ムスタディオ 「・・・今は話すことができない。」
騎士アグリアス 「では、ダメだ。お前を連れて行くことはできない。」
しかしムスタディオは引き下がらなかった。
機工士ムスタディオ 「お願いだ!オレを信用してくれ!枢機卿に会わなきゃいけないんだ!」
ムスタディオは真剣だった。
その時、扉が開いてオヴェリアが部屋に入って来た。
アグリアスとラムザがすかさず跪く。
王女オヴェリア 「分かりました。一緒に参りましょう。」
アグリアスが紡ぎ出したのは、思いもかけない言葉だった。
機工士ムスタディオ 「ホントかい?ありがとう、お姫様!」
騎士アグリアス 「王女の御前ぞ!」
アグリアスに一喝され、ムスタディオも慌てて王女の前で跪いた。
王女オヴェリア 「良いのです。さあ、面を上げて下さい。」
王女の言葉に従い、3人は立ち上がった。
騎士アグリアス 「分かった。お前を信用しよう。」
こうして新たな人物、ムスタディオを加えたラムザ達一行は、枢機卿の元へと先を急いだ。

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FFT

2006年9月29日更新