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惑星イヴァリース。
緑豊かな美しい星である。
この惑星には我々と同じ人間や獣達が生活を営んでいた。
しかし人間と獣達は決して相容れることはなかった。
ごく一部の者達を除いては・・・。

イグーロスの領主、バルバネスは早くに病で妻を亡くし、後妻として迎えた妻をもつい最近、事故で失っていた。
しかし彼には愛すべき自慢の子ども達がおり、自らを不幸せだと感じたことなど一度もなかった。

「おとうちゃま、あるまとおにわであちょんでくるね。」
末弟のラムザが1つ年下の妹、アルマを連れていつものように庭へと出て行く姿を、バルバネスは微笑みながら見送った。
バルバネスには4人の子ども達がいた。
しっかり者の長兄ダイスダーグ、面倒見の良い次兄ザルバッグ、心優しい三男ラムザ、そしてラムザにべったりの末っ子アルマ。
上の2人は先妻、下の2人は後妻との間にもうけた子どもであったが、彼にとっては皆、かけがえのない宝だった。

「おとうちゃまー、くろいねこしゃんがいるのー。」
そう言って、いきなりラムザが1人で駆け込んできた。
「どうした、ラムザ?アルマは?」
「あのね、くろいねこしゃん、ちがでてるの。たしゅけてなのー。」
息子の小さな手に引っ張られて、バルバネスは庭へ出て行った。
「これは・・・。」
確かに一見子猫のようだが、猫にしてはやや大柄で、何よりも普通の猫とは違い、人間の体を持っていた。
「亜人か?」

イヴァリースでは人間の他に、ごく少数であるが、人間と獣との中間である生物、亜人が存在していた。
亜人は数が少ないため大変貴重な存在で、多くは奴隷として売りに出されたり、ペットとして飼われたりしていた。
人間と獣との中間とはいっても、体つきは人間そのもので、耳や尻尾が獣のそれである以外は、人間と変わりはなかった。
獣のような抜群の運動能力はあったが、言葉を話すこともできた。
ただ大きく違うのは、亜人は完全な獣の姿になることができるということであった。
しかし逆に、完全な人間の姿になることはできないと言われていた。
というのも、今まで亜人が完全な人間の姿になったことを見たものがいなかったからである。

「かわいそうに。怪我をしているな。さあ、屋敷へ連れて帰ろう。」
「だいじょぶ?ねこしゃんなおる?」
バルバネスの服の裾を引っ張りながら、心配そうにラムザが後をついてきた。
「なおゆ?」
アルマも心配そうである。
バルバネスは心配ないというように、ラムザとアルマの頭に手を乗せた。
「大丈夫だ。出血は多いが、怪我自体は大したことないぞ。」
「ぼく、ねこしゃんといっちょにねるのー。」
ラムザはそう言って、亜人を寝かせている布団に潜り込んだ。
「ラムザ、人間は亜人と一緒に寝るものじゃないぞ。さあ、出るんだ。」
長兄のダイスダーグがラムザを引っ張り出そうとすると、ラムザは今までにない程、激しく反抗した。
「いやだあー。ねこしゃんとねるのー。」
「兄上、ちょっと・・・。」
ザルバッグがダイスダーグを部屋の外へ連れて行く。
「何だ?ザルバッグ?」
「ラムザが寝入ってから連れ出せばいいじゃないですか。これまでにない程に、嫌だと言っているんですから。」
「全く、これだから亜人とのハーフは困る。」
「兄上っ。」
ザルバッグは兄をたしなめるように叫んだ。

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