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ラムザとアルマの母は、亜人であった。 美しい銀色の毛並を持っていた彼女を一目見て、バルバネスは恋に落ちた。 亜人を妻に娶るものなど、聞いたことがないと周りからは呆れられたが、彼女を心から愛していたバルバネスは周りの反対を押し切って、彼女を妻に迎えた。 そして生まれたのがラムザとアルマであった。 ラムザは母親に似た顔立ちで、アルマは父親である自分に似た顔立ちをしていた。 2人共素直な良い子であったが、こうと決めたらテコでも動かない頑固さをも持ち合わせていた。 そんな年の離れた弟、妹達を、ザルバッグは快く迎えてくれたが、元々亜人に対して快く思っていなかったダイスダーグは、事ある毎に、すぐに2人の母親のことを引き合いに出した。 「ラムザもアルマも血を分けた弟妹なんですよ。」 ザルバッグが幾分声を穏やかにして言ったが、ダイスダーグは納得していないようであった。 「ふんっ、まあいい。傷が癒えたら、あの亜人を奴隷として使ってやろう。」 そう言って、ダイスダーグは自室へと戻って行ってしまった。 兄にも困ったものだと思いながら、ザルバッグは部屋の扉を開けた。 「すーっ、すーっ。」 ラムザはいつの間にか、亜人の側で寝息をたてていた。 「部屋へ連れて行きましょう。」 そう言ってザルバッグはラムザを布団から連れ出そうとした。 「!」 3歳になったばかりの子どもとは思えないほどの力で、ラムザはぎゅっと亜人に抱きついていた。 「仕方ない。そのままにしておきなさい。」 バルバネスは笑いながら言った。 「この亜人ですが・・・。猫ではありませんね。」 ザルバッグは黒い毛並の亜人に目をやりながら言った。 「ああ、これは黒豹だな。」 「黒豹ですか?珍しいですね。大方は猫ばかりなのに。」 「そうだな。かわいそうに。珍しいので狙われたか。」 「この亜人、傷が癒えたらどうするのですか?」 「ラムザもこの子を気に入っているようだし、屋敷に置いてやろうと思う。」 「本気ですかっ?」 「ザルバッグ。お前とは血はつながっていないが、私の2人目の妻も同じ亜人だったのだよ。」 「それはそうですが・・・。兄上が何と言うか・・・。」 「ダイスダーグにも困ったものだな。亜人嫌いさえなければ、良い奴なのだが・・・。」 「うーん。ねこしゃん、はやくげんきになってね。」 ラムザの寝言が聞こえた。 「母親に似て、優しい子だ。」 バルバネスがラムザの方を見て言った。 「私はラムザにはこのまま素直に育って欲しいと思っている。ダイスダーグは育て方を間違えたらしい。」 「父上・・・。」 確かにラムザは非常に素直で、兄妹の誰よりも優しい気持ちを持っていた。 ザルバッグもこの弟をとてもかわいがっていた。 「そうですね。」 ザルバッグは、父親の言葉に頷いた。 |