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金色の髪を持つラムザと、やや褐色がかった金色の髪を持つアルマとは対照的に、真っ黒な髪を持つ少年。 そして、その頭上には猫のような耳がピンと立っている。 明らかに異色な存在であった。 (あれは・・・。亜人か?何故亜人と人間が一緒にいるのだ?) 男はその様子に興味を惹かれ、3人の元へと近付いて行った。 ディリータが突然耳をピクッと動かした。 「誰か来る!」 なるべくならラムザ達以外の人間と顔を合わせたくないディリータは、早くこの場を立ち去りたかった。 しかしチョコボに夢中のラムザとアルマがいては、それは叶わない。 「お前達、何をしている?」 ディリータは全身の毛を逆立てて身構えた。 今にも唸り声を上げそうな様子である。 しかしラムザとアルマは満面の笑みを浮かべながら、ヴォルマルフを振り返った。 「うーんとねー、ちょこぼをみてるのー。」 ヴォルマルフはもう一度3人の様子を観察した。 どう見てもこの子達は、亜人に襲われているのではなさそうだった。 しかし実際に亜人を目にしたのは初めてであり、その非常に珍しい亜人と一緒にいるこの子ども達もヴォルマルフにとっては不思議な存在であった。 身なりからして彼らは、かなり立派な家柄の子ども達に違いない。 ということは、この亜人は奴隷なのであろうか? しかしそれならば、通常奴隷として人間に飼われる存在である亜人が、このように立派な洋服を着ているということ自体、おかしな話だった。 「私は神殿騎士団長のヴォルマルフという者だ。君達はこの近くの子か?」 「うーんとね、ぼくのおうちはあっちなのー。」 ラムザはベオルブ家のある方向を指差した。 「で、その亜人は・・・。」 「あじんってなーに?」 「その子のことだ。」 ヴォルマルフはそう言って、ディリータを見やった。 「りーたはぼくのおともだちなのー。ぼくのおうちにいっちょにいるのー。」 (何だと?やはり奴隷なのか?でも奴隷に洋服を着せるなんて・・・。) 「きちだんちょって、おとうちゃまといっちょ?」 ラムザがふと思い出したように尋ねた。 「きち・・・だんちょ?ああ、騎士団長のことか。君の父上は騎士なのか?」 「うん。おとうちゃまはほくてんきちだんのえらいひとなのー。」 「じゃあ、バルバネス・ベオルブ殿か?」 「そうなのー。」 ヴォルマルフは驚いた。 北天騎士団といえば、騎士団の中でも最高位と称される騎士団である。 その団長であり、このイグーロス地方を治める領主であるバルバネスの名は、神殿騎士団長であるヴォルマルフの耳にも伝わってきていた。 それならばこの立派な身なりにも頷ける。 ただひとつだけ納得いかないのは、この亜人の存在である。 ヴォルマルフはバルバネスに是非とも会って、話を聞いてみたいものだと思った。 「すまないが、私はバルバネス殿に用があってね。是非ともお会いしたいのだが。」 「おとうちゃまのおともだち?」 「まあ、そんなようなものだ。」 「バルバネス様は約束がない人にはお会いしないっ!」 それまでヴォルマルフを睨むように立っていたディリータが、突然大声を上げた。 何故だか分からないが、ディリータはこの男が気に入らなかった。 自分をいかにも身分の卑しい者であるかのように見つめる、その瞳が気に入らなかったのかもしれない。 ディリータはヴォルマルフを屋敷に連れて行きたくはなかった。 「お前にそんなことを言う権利があるのか?」 それまでにこやかに微笑んでいたヴォルマルフが、冷たい表情で言い放った。 しかしそれはあくまでも、ディリータに向けてである。 ラムザとアルマに向ける表情は、それまでのものと変わらなかった。 (やっぱりだ。こいつは俺のことを奴隷としてしか見ていない。) ディリータは負けずにヴォルマルフにきつい眼差しを向けた。 知らないうちに、尻尾までがピンと伸びて震えていた。 「じゃあ、おうちにいこうなのー。」 ディリータの様子に全く気付くことなく、ラムザはヴォルマルフの腕を引っ張りながら言った。 仕方なくディリータは、ラムザ達の後から付いて行った。 |
2006年9月29日更新