謁見

帝国の大将軍テオ・マクドールの息子、シバは皇帝陛下との謁見を前に緊張していた。

そんな息子の様子を見かねたのか、父親が声を掛ける。

「どうした?シバ。緊張しているのか?安心しろ。”謁見”はすぐに終わる。お前はいつも通りにしていれば良い。皇帝陛下は、厳しい方だが恐れる必要はない。」

「はい。」

そう答えたものの、緊張は隠せない。

「テオ様、シバ様。謁見の準備が整いました。こちらへどうぞ。」

謁見の開始を知らせる侍女であった。

マクドール親子は侍女に続いて謁見の間へと向かった。

「帝国軍大将軍テオ・マクドール様。そのご子息、シバ・マクドール様。皇帝陛下との謁見のため、ご入室致します。」

シバは父親の後に続いて謁見の間へと足を踏み入れた。

さすがに一国の皇帝を務めるだけあって、皇帝バルバロッサはシバにとっても威厳と風格を感じる存在であった。

「よく来てくれた、テオ。どうだ、変わりはないか?」

「陛下と共に戦ったあの継承戦争の頃と同じく。」

「頼もしい言葉だな。そうは思わんか、ウィンディ。」

「そうですわね。さすがは大将軍のお言葉です。」

「テオ、お前も北方での不穏な動きを知っておろう。どうだ、北方の守りに出向いてもらえるか?」

「北方、ジョウストン都市同盟との争いは一筋縄では、いかないでしょうが、テオ将軍ならば安心です。」

そう言葉を添えたのは大臣である。

皇帝バルバロッサは満足そうに頷くと、一振りの立派な剣を取り出した。

「この我が愛剣プラックは幾度となく私を守った幸運を呼ぶ剣だ。お前に与える。持って行くが良い。」

テオは皇帝の前へと進み出ると、恭しく剣を受け取った。

「有り難うございます。このテオ、必ずや陛下のご期待に応えてみせます。」

「頼んだぞ。無事に戻れよ、テオ。」

「はい。」

皇帝から剣を賜ったテオは下がり、変わって息子のシバが進み出る。

「ふむ、そちがテオの息子、シバか。さすがにいいツラ構えをしておるな。シバよ、テオが北の守りについている間、父の代わりに、この帝国に力を貸してくれないか。」

父譲りの意志の強そうな目で皇帝を見つめながら、シバはしっかりと答えた。

「分かりました。父の代わりが立派に務められますよう、努力致します。」

「なるほど。父に似て立派なものだ。私の楽しみが一つ増えたな。」

「勿体無いお言葉、有り難うございます。」

テオ・マクドールはこの時ばかりは一将軍としてではなく、一人の父親として答えているようであった。

謁見が一通り終わり、大臣が言葉を添える。

「近衛隊隊長、グレイス殿が、シバ殿の上官となります。」

そこへ、ウィンディと呼ばれた妖艶な美女がシバに近付いて来た。

「ふふふ、かわいい坊ちゃんだこと。頑張りなさいね、シバ君。」

「は、はい。」

「ふふふ・・・。」

「それでは、これで失礼致します。」

「頼んだぞ。テオ。シバよ、テオ以上の働きを期待しているぞ。」

「はい。」

マクドール親子は謁見の間を後にした。

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