清風山

「ふう、やっと清風山に着いたな。お前ら、相手が山賊だからってびびって逃げるなよ。」

清風山に到着すると、カナンが息を整えながら言った。

「あんたもな。」

パーンがぼそっと呟いた。

「ようし、行くぞ!パーン、お前が先頭に立て。」

「えっ、何で俺が先頭なんだよ。」

「うるさい。グズグズ言わずに早くしろ。俺様はリーダーだから一番最後だ。」

どうやらカナンにはパーンの呟きが聞こえていたようである。

「ちっ。」

パーンは舌打ちしながらも、おとなしく先頭に回った。

「シバ、ふふ。ゾクゾクするな。」

テッドは呑気にそんなことを言っている。

「テッド君。あんまり変なことを言わないで下さい。坊っちゃん、危ないマネはしないで下さいね。坊っちゃんの身はこのグレミオが守りますから。」

「おい、行くぞ!!」

カナンが焦れたように言った。

清風山を登って行くと、途中で何度か山賊や黒いのししに出会った。

「おい、まだなのか?」

少し広い場所までやって来ると、自分は戦闘には加わらずに隠れていたのを棚に上げて、カナンが疲れた様子で言った。

「そんなことを言っている暇はないみたいだぜ。」

パーンが緊張した面持ちで、後ろを振り返ることなく言った。

目の前には一行の行く手を塞ぐように巨大な蟻が立ちはだかっている。

「うわあっ、さっさと何とかしろっ!」

カナンは大騒ぎである。

「困りましたね、クィーンアントです。兵隊蟻を従えていますから、厄介ですね。」

クレオも緊張した面持ちで刀を構えた。

「は、速い!」

クィーンアントは素早い動きで一行に襲い掛かってきた。

「たあっ。」

まずは周りの兵隊蟻から倒して行ったが、倒しても倒してもどんどん現れてキリがなかった。

「クィーンアントを倒さないと駄目なようですね。」

「くそっ、何て強さだ。全く相手にならないぞ。」

さすがのパーンにも疲労の色が濃く表れている。

「まずいな。このままじゃ全滅・・。」

「バカ者!な、何を言っておる。お前ら、俺様を守らんか。」

カナンがクレオの言葉をさえぎるように叫んだ。

「坊っちゃん、ここは逃げましょう。私が守りますから。」

グレミオが後方に目をやりながら提案した。

「いや、逃げ切れるかどうか。」

クレオが言った。

「どうするのだ!!」

カナンは青い顔をしている。

その時、今まで黙っていたテッドが意を決した様子でこう言った。

「シバ、みんな。下がっていてくれないか。俺に考えがあるんだ。」

「危ないことはやめるんだ、テッド。」

「心配すんなって、シバ。任せとけよ。ありがとなシバ、心配してくれて。」

そう言うとテッドは右手を高く掲げた。

その途端、クィーンアント達は吸い込まれるように消えてしまった。

「こ、これは・・。」

カナンが驚きに目を見開いている。

「テ、テッド君!今のは何だったんですか?」

グレミオが尋ねたが、テッドは目を伏せながら言った。

「すいません。今は説明することはできません。シバ、家に戻ったら話したいことがあるんだ。それまでは聞かないでくれ。」

「分かったよ、テッド。」

「さあ、さあ、早いとこ、山賊をやっつけちまって、グレッグミンスターに戻ろうぜ。」

テッドは先程とは打って変わって明るい調子で言った。

「そうですね。」

一行は再び歩き始めた。

そんな中、最後尾のカナンだけがテッドを意味有り気にじっと見つめていた。

「ふーーむ、これはクレイズ様の言っていた・・・。」

何やら考え込むようにしてカナンが呟いたが、誰もその声を聞いた者はいなかった。

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2005年6月24日更新