軍政官

軍政官のグレィディの屋敷に到着すると、下男らしき男性が偉そうに立ちはだかった。

「こらこら、お前らは何者だ。ここはグレィディ様のお屋敷だぞ。勝手にズカズカと上がり込むんじゃない。用なら私が取り次いでやる。」

「何だと!俺様は帝国軍近衛隊隊長クレイズ様の副官、カナン様だぞ!とっとと、グレィディに出て来いと言え!」

それを聞いた下男は慌てて態度を改めた。

「えっ!は、はい。今すぐ。少々お待ちを。」

下男は大急ぎでグレィディを呼びに行ってしまった。

「何だ。また村の奴らが抗議に来たのか?とっとと追い返せ。」

自室へと入って来た下男を見て、グレィディが不機嫌そうに言った。

「いえ、何でも近衛隊の奴らだとか・・・・。」

「近衛隊だか何だか知らんが、私は忙しいのだ!早いとこ・・?んっ?近衛隊?何だって?近衛隊だって。何で早くそれを言わん!」

そう言うとグレィディは慌ててカナンの元へと向かった。

「いやあ、これはこれは近衛隊の皆さん。こんな田舎の町までようこそいらっしゃいました。こんな所で話も何ですから、こちらへどうぞ。」

グレィディに奥へと案内されたカナンは、部屋をじろじろと眺めた。

「ふん、なかなかいい暮らしをしているようじゃないか。」

「いえいえ、そんなことはありません。」

「まあ、そんなことはいい。それよりも、何故、我々がここに来たか分かっているな。」

「勿論ですとも。税金のことでしょう。私達もほとほと困っているんですよ。実は、この近くの清風山に山賊が住み着きまして、辺りの村を荒らし回りとても税金を取れないのです。そのために税金の納入が遅れていたのですが、もう大丈夫ですな。」

「大丈夫?どういうことだ。」

「そりゃぁ勿論、近衛隊の勇士の皆さんが来てくれたんです。田舎の山賊ごとき、退治するのは朝飯前でしょう。まさか、尻込みしませんよね。」

「わっはっはっはっは。勿論だとも。んっ、山賊、う、うん。まあ大丈夫だろう。そんな奴ら、一捻りだ。はっはっはっはっはっは。」

グレィディにうまくのせられたカナンは、1人でさっさと山賊退治の約束をしてしまった。

「バカな、我々の任務は・・。」

クレオが口を挟もうとしたが、パーンは嬉しそうに言った。

「はっはっは、ウデが鳴るぜ。やっぱこうでなくちゃな。」

「そうですね、一暴れしてやろうぜ。なあ、シバ?」

テッドもこう言ったが、シバは勝手な行動を取って良いものかどうか迷った。

「一度戻った方が良いのでは?」

「何だと。このパーティのリーダはこの俺様だ。俺様が行くと言うんだ。黙って付いて来い。この腰抜けが。」

カナンは聞く耳を持たなかった。

「よし、すぐさま出発だ。お前ら、遅れをとるなよ。」

「出発するのはいいんですが、清風山がどこにあるか知ってるんですか?」

「う、うるさい。今聞こうとしてたんだ。」

グレミオの質問に、カナンはばつが悪そうに言った。

「清風山は、このロックランドから東に行った所にあります。」

グレィディが説明する。

「よし、今度こそ出発だ!」

そう言って勢い良くドアを開けたカナンだったが、下男が彼を引き止めた。

「近衛隊の方々、出口はこちらですよ。」

「わ、分かっている。」

カナンは赤い顔をしながら体の向きを変えた。

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