妖雲

崑崙派総本山 玉虚宮

太公望と白鶴が原始天尊の元へとやって来ると、その場で跪いた。

「原始天尊様、仰せの通り、参上致しました。」

「そちが入門して、早五年か・・・・・・。どうじゃ、修行は?」

声を掛けられ、太公望と白鶴は立ち上がる。

「まだまだ未熟で・・・・・・。より一層修行に励みたいと思っております。」

「うむ、良い心がけじゃ。道士たるもの、常に修行を怠ってはならんぞ。」

「ところで、今日呼んだのは他でもない。」

「そちに、この崑崙山を降りてもらいたいのじゃ。」

その言葉に反応したのは白鶴であった。

「ええっ!それって、破門ってことですか?原始天尊様、ひどいよ!」

「白鶴、早とちりするな。奴に人界で仕事をひとつしてもらうだけじゃ。」

「・・・・・・人界で仕事!?」

「なあんだ、良かった。びっくりして損しちゃった。」

ここで太公望がようやく口を開いた。

「それで、師匠。その仕事というのは・・・・・・。」

「人界の大国、商は知っておるな。その都・朝歌の上空に、最近怪しげな雲が広がっておる。」

「思い過ごしなら良いのだがどうも、嫌な予感がしてならない。」

「そこで、そちにあの妖雲について調べてきてもらいたいのじゃ。」

太公望は再び跪いた。

「はっ!」

「これを渡しておこう。」

「打神鞭という宝貝だ。」

太公望は立ち上がると原始天尊の元へと向かい、打神鞭を受け取った。

「そちの働きに期待しておる。では、行くが良い。」

太公望は人界へ向かうべく歩き始めたが、白鶴の甲高い声によって引き止められてしまった。

「ししょー!頑張ってねっ!」

太公望はしょうがないなといった様子で振り返ると、口を開いた。

「・・・・・・前から言ってるだろ。『ししょー』って呼ぶなって。」

「だって、『ししょー』の方が呼びやすいんだもん。ねっ、いいでしょ?ししょー!」

そんな白鶴の様子を見かねて、原始天尊が声を掛けた。

「これ、白鶴!邪魔をするでない。こっちへ参れ。」

「怒られちゃったよ・・・・・・。あたし、戻るね。」

そう言って戻りかけたものの、白鶴は再び太公望を振り返った。

「じゃあ、行ってらっしゃい!」

「ああ、行って来る。」

そう言い残して、太公望は人界へと向かったのであった。

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