1 |
俺は草薙優。14歳の中学2年生。名前と小柄な外見のせいで女の子と間違えられやすいが、これでも立派な日本男児だ。 家はまごころハウスっていうコンビニを経営していて、俺も週に2〜3回は店を手伝っている。 一応バイト料ももらっているしな。 いまどきのコンビニといえば24時間営業が当たり前になっているけど、うちは朝7時から夜9時までの14時間営業だ。 これじゃあ他の店に客を取られるんじゃないかと心配だって? それが結構頻繁にお得意さんが来てくれるんだよな。 お客さんの話によると、うちに来るとほっとするんだそうだ。 まあそれも、両親の人当たりの良さが原因かもな。 「いらっしゃいませー。今日もいいお天気ですねー。」 のほほんとお客さんに挨拶をしているのが俺の母親の早希。 一見子持ちには見えないって、みんなが驚いている32歳。 年よりも断然若く見える。 セーラー服とか着たらきっと、高校生でも通じるぞ。 俺と並んで歩いていると、知らない人からはご姉弟ですか?って言われるもんな。 そういう俺も、結構小学生に見られることが多くて、それが悩みの種だったりもする。 背が伸びるのを期待して作った制服も、いまだにぶかぶかだったりするもんな。 格好悪くてしようがない。 「優ってば、制服を着ているっていうよりも、制服に包まれているって感じだよな。」 なんて、クラスメートの水沢甲斐にはからかわれるしさ。 甲斐ってば、俺と一番の仲良しなんだけど、何かと俺をからかってくるんだよな。 まあそれも仲がいい証拠といえばそうなんだけど。 「全部で1580円になります。」 母さんに負けず劣らずの笑顔を振りまいているのが、俺の父親の彰。 やっぱりまだ若い33歳。 同じくかなりの童顔だ。 俺の童顔もこの両親から受け継いだのだと思えば、仕方がないんだけどね。 でもさあ、納得いかないのが身長。 父さんは186cmもあるのに、どうして俺は150cmしかないんだよー。 母さんとほとんど身長変わらないんだぜ。 しかも俺の方が母さんより3cmも低いときている。 中学校へ入ってからもほとんど伸びない身長のせいで、朝礼の時はいつも一番前だ。 「優ちゃんー。今日は学校から帰ったらお店を手伝ってねー。」 「うん。分かったよー。」 まるで母さんの口調が移ったかのような俺の返事にはわけがあったりするんだ。 まあ、それはおいおい話すことにして、今は学校へ行かないとな。 「行って来まーす。」 「優ちゃん、気を付けてねー。」 「勉強頑張るんだぞ。」 何だかほんわかと両親に見送られて、俺は通い慣れた道を学校へ向かって歩き始めた。 「おっはよー、優!」 後ろから走って来たのは甲斐。 大抵こんな感じで、学校へもほとんど毎日一緒に通っているんだよな。 「おはよう。甲斐。」 俺もにこやかに挨拶を返す。 「相変わらずちっちゃいなー。」 そう言って甲斐は頭をぽんぽん叩いてきた。 「んもうー、やめてってばー、甲斐ー。」 俺はぐしゃぐしゃになった髪の毛を手ぐしで直す。 「ところでさ、お願いがあるんだけどなー。」 両手を合わせて甲斐が俺の前に移動する。 「何?」 「昨日の数学の宿題なんだけどー。学校行ったら見せて!」 「もうー、宿題やらなかったのー?」 「いや、やろうとしたんだけどさ、さっぱり分からなくて・・・。」 頭をぽりぽりかきながら甲斐が苦笑する。 「もうー、しょうがないなー。」 「だから好きだよー、優ー。」 そう言って甲斐は僕に抱きついてきた。 「んもう、やめてってばー。」 俺は恥ずかしくて甲斐の腕を振り払った。 だって通学路だぜ。 一般人だって通る公道だぜ。 こんな道のど真ん中で抱きつくなんてさー。 甲斐には悪気はないんだろうけど・・・。 案の定、周りの人間はあっけにとられたように俺達を見ている。 うーっ、恥ずかしい。 俺はもたもたと走り出した。 「おい、優、どうしたんだよー。」 甲斐も慌てて追いかけてくる。 そんなこんなで学校へ辿り着くと、俺はすっかり息をきらしていた。 「相変わらずだな、優。バテたか?」 「もう駄目ー。ノート勝手に見てー。」 そう言って俺は数学のノートを甲斐に差し出すと、机の上に突っ伏した。 |