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実はコンビニ経営というのは表の顔であって、3人共別の仕事を持っているというわけなんだ。
えっ、中学生の俺まで?って思うかもしれないけど、俺は時々父さんの仕事を手伝うアルバイトってところかな?
でもいずれは俺も正式に父さんと同じ仕事に就かされることになるらしい。
実は俺はあんまりそういった仕事はしたくないんだけど、両親は俺が物心つく前からそう言った仕事に就かせるような育て方をしてきたらしい。
大体TV番組だって子どもが見るような番組を見せてもらったことがないんだぜ。
刑事もの、忍者もの、戦争もの、カンフーものなんていうアクション物ばかりだった。
これって行き過ぎだと思わねぇ?
よくすさんだ心の持ち主にならなかったもんだと、我ながら感心するよ、ほんと!
小さい頃は、ご飯を食べる前にちょっとした実践テストがあって、合格するまで食べさせてもらえないなんてこともあった。
最近は食後の訓練だけにとどまっているけどな。
毎日欠かすことのない特訓は、3時間にも及ぶ。
3時間じゃ少ないとか父さんは言うけど、寝る時間を削ってまでやってられねぇっての。

何、何?
仕事が何か知りたいって?
じゃあまず、父さんと母さんの過去についてちょっと語ってみないとな。
父さんは昔は海外の特殊部隊で隊長をしていたらしい。
ちょっと平和な日本じゃ考えられないだろ?
何でもブラックパンサーとかいう二つ名を持っていて、名の通った人だったらしい。
そのせいかあらゆる格闘術を身に付けているというわけだ。
結婚をきっかけに部隊をやめたから、昔の父さんの仲間を通じて来る仕事を時々引き受けるっていう感じかな?
内容はボディガード中心。
その報酬はかなりのものだし、多い時は月に5〜6回は仕事が入るから、コンビニの収益よりも実はこちらの報酬の方が高かったりする。
だから家はかなり裕福な方だと思う。
父さんも母さんも華やかな生活は好きじゃないから、こうやって一般的な中流家庭を築いているけどね。
普段は温和な父さんだけど、訓練になると途端に厳しくなる。
実際怪我なんて日常茶飯事だ。
でも一応武器にはガードを付けて威力を弱めてあるから、命に関わるような怪我っていうのはないんだけど。
俺には天然ボケで鈍くてよく転ぶっていうイメージがあるから、俺に擦り傷が多いのもみんなそのせいだと思ってくれているみたいだ。

母さんも結婚前は父さんと同じ部隊で、女だてらに副隊長をしていたんだそうだ。
母さんにも二つ名があって、スカーレットローズって呼ばれていたらしい。
母さんは合気道と空手の達人で、忙しい時はたまに仕事を引き受けることもあるけど、大抵は父さんの留守を守ってコンビニ経営をとりしきるのが中心だ。
普段はのほほんとした天然ボケっぷりを発揮している母さんだけど、訓練の時はやっぱり別人のように厳しくなる。
父さんと母さんの2人は特殊部隊の中で、常にナンバーワンとナンバーツーの座に就いていたんだそうだ。
直接2人から聞いたんじゃなくて、昔父さんの部隊にいたっていうハウエルに聞いたんだけどね。
ハウエルは今は近くに住んでいて、俺も小さい頃からよく一緒に遊んでもらっていた。
父さんよりも2つ年下らしいから、今は31歳。
とっても気さくだ。
でも特殊部隊出身だから、俺の知らないところでは別の顔を持っているのかもしれない。
俺の前では笑顔を絶やしたことはないけどな。

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2006年9月15日更新