絶対的な境地を獲得するカバラ
超人モーゼに授けられたカバラの叡智で述べたように私達はこうして分裂してしまい、個性として生きています。そして他人と競争しあい、時には憎しみを抱いて戦争までしているのです。
しかし我々は本来、アダム・カドモンとしてひとつに結ばれているのです。つまり、他人を傷つけるということは、自分自身を傷つけているということにほかならないのです。私達はただ分裂しているように見えるだけで、本当はただひとつの魂を共有しているのです。私達に「愛」の感情が宿っているのも、本来お互いがひとつに結ばれていることを、魂が知っているからなのです。
私達は全体としては完全ですが、個としては不完全です。そのためにお互いの長所を生かし合い、欠点を補い合って生きなくてはならないのです。男性は女性の持つ長所を学び、女性は男性の持つ長所を学ぶ必要があります。多くの人々と出会い関係を結ぶのも、決して対立したり競ったりするためではなく、和合し助け合ってお互いに精神性を高めるためなのです。そして、それを促進させる最大の鍵が「愛」なのです。
愛を高めていくにつれ、アッシャーに縛られていた意識がイェツィラーへと移行します。この時、肉体に伴ういろいろな制約から解放されます。時間や空間の限界が消失してESPなどの超能力が開発され、この世の喜びとは比較にならない幸福感がこみ上げてきます。この世界では肉体を持たないために、人種や階級、地位や貧富といった区別なく人を愛するようになります。
そして究極の愛を発現した時に、意識はアツィルトへ到達します。つまり、アダム・カドモンと合体します。この時人は至高の幸福を掴み、輝ける栄光の存在となり、全てを支配しうる勝利者となります。ここに至って一切の区別なく、全ての人々を平等に愛することができるのです。
この境地-----全ての人を愛し、絶対的な幸福と超人的な能力を持つこと-----の獲得こそが、カバラの目指すところなのです。カバラとはその境地に至るノウハウの集積であって、決して特定の神や信仰を押しつけたりする宗教ではないのです。