シンビオス達が次に入った建物には、桟橋警備隊のメンバーが集まっていた。
「あれはエルフですね。」
「弓を持っているわ。」
「話を聞いてみよう。」
一行はエルフの方へ向かった。
「私は傭兵として大陸を放浪しながら理想の主人探し求めているうちに、このサラバンドに辿り着いたのだ。この国は良い。気に入ったからこそ、こうして桟橋警備隊に雇われたのだ。だが、そろそろ次の旅に出ようかな。」
そんな一行に、老人が声を掛けてきた。
「サラバンドはどうじゃな、お若いの?」
「はい。活気に溢れていて良い町ですね。」
「そうじゃろ、そうじゃろ、すごいじゃろ。サラバンド国の元首、グラビー総督の力でこんなにすごい国ができたのじゃよ。サラバンドが中立貿易国として建国され、これだけ発展しここまでなれたのは、みんなグラビー総督の力なんじゃ。」
老人は得意気に語った。
そんな彼らに目を向けた1人の兵士が、驚いたように言った。
「お連れはもしや、共和国のダンタレス殿。」
「私のことをご存知なのですか?」
「それはもう。フラガルド地方の槍の使い手と評判で、帝国にまでその名が知れ渡っていますよ。」
「さすがダンタレスね。」
マスキュリンまで嬉しそうである。
「ダンタレス殿が一体何故サラバンドへ?和平会議ですか?」
「はい。」
「そうですか。この会議にお越しとはね。いやあ、お会いできるとは感激だなあ。」
更に一行は、他のサラバンド兵士達にも話を聞いてみた。
「バーランドの軍事的な価値が高いから、帝国軍も内乱を口実に侵攻したのだ。だから、会議が長引くのも当然さ。だが我々は、和平会議が成功して欲しい。このバーランド抗争が両国を感情的にし、全面戦争にまで発展しないことを望むよ。」
「帝国と共和国、両国の首脳が会すため、この和平会議の開催されている間・・・我ら、サラバンド警備隊の役目は重要だ。気の荒い両国の将軍同士が遭遇したらその場で戦争が始まりかねないのだから、少しも気の抜ける間もないのだ・・・。」
ここにはサラバンドの兵士だけではなく、共和国の兵士も待機していた。
「どうだ、様子は?」
ダンタレスが声を掛けると、共和国兵は慌てて敬礼をした。
「はっ、今のところ警備は順調です。怪しいことは何ひとつありません。こんなに平和な状態なのですから、町を見学に行ってはダメですかね?」
「そう言ってあげたいのはやまやまなんだけど・・・。」
シンビオスが済まなそうに言うと、兵士は諦めたように言葉を続けた。
「そうですよねえ。良いなんて言って後でそれがティラニィ様達に知れたら、シンビオス様が怒られてしまいますね。」
「お出掛けですね、シンビオス様。おや、皆さんご一緒ですか?いいなあ。羨ましいなあ。」
すると、もう1人の共和国兵もこう言った。
「初めての大都市サラバンドですから、私も私も見て歩いてみたいものです。今度は私も連れて行って下さいね。」「そろそろ寄宿舎の方へ戻ってみませんか?」
グレイスの問い掛けに、シンビオスも同意した。
「そうだね。」
共和国寄宿舎へ戻ると、ブライバブルが言った。
「サラバンドの西に帝国の寄宿舎がある。新しい情報が色々と聞けるかも知れん。多くの人々と話してみると良いだろう。」
「はい、分かりました。」
その会話を聞いたティラニィが続ける。
「お父上のコムラード殿が来なかったのは、共和国にとって多くの痛手になっている。その分、お前が役立たねばならぬのだ。」
「はい。私にできる限りのことをしたいと思います。」
そう答えると、シンビオスは更なる情報を求めて再び町に繰り出した。
町には相変わらず人が沢山いたが、できるだけ沢山の人物の話を聞くべく、シンビオス達は片っ端から人々に声を掛けていった。
「彼、今日は非番で朝からハトの世話です。それが終わってから食事に行く予定ですが、ああ、全然終わりそうにないみたいですわ。彼のハトは驚くほど賢いんです。たまに故郷に連絡を取ったり・・・両親に仕送りするのに役立ててます。」
女性の隣りには弓を持った男性がいた。
彼女の恋人らしい。
「共和国の方々に会うのは久々ですよ。実は私、共和国の貧しい村の出でして、兄と共に新天地を求め脱出したのです。サラバンド国の守備隊に入ってからは貧しさから解放され、とても幸福です。」
「そうですか、苦労されたんですね。」
「ええ、でも今はこうして幸せな日々を送っていますので。」
「頑張って下さい。」
「はい。ありがとうございます。」
シンビオス達は次に、サラバンド守備隊兵舎へと向かった。
「ここで話を聞きましょう。」
シンビオスは、1人1人に話を聞いていった。
「若い兵士を見ていると、昔を思い出す。まだ共和国が帝国から独立する前、あれもまた面白い時代だったなあ。ドミネート皇帝が即位されてからは民衆と貴族の差別化政策が進んで、やがて共和国が独立を宣言したのさ。」
兵舎には少年もいた。
「お姉ちゃんなら、恋人のガロッシュとハト小屋でデートしてるんじゃない?お兄さんの警備隊長意外にも兄弟がいて、その弟さんは今、共和国軍にいるってさ。結構田舎の軍隊らしいけど。」
先程の女性の弟であった。
「あんたは共和国の建国後に生まれた人なんだろうね?」
女性が話し掛けてきた。
「はい、そうです。」
シンビオスが答えると、女性は話を続けた。
「あたし達は帝国から逃げるようにしてやっとサラバンド国民になったけれど、あんたのお父さん達は本当に偉かったよ。あの怖ろしいドミネート皇帝軍と戦って、自分達の国を手に入れたんだからさ。」
その他、4人の兵士がいたためそれぞれから話を聞いた。
「あんた、サラバンドの西地区にはあんまり近付かない方が良いと思うよ。共和国には知らされていないのだが、共和兵とは比べ物にならぬほど、多くの帝国兵が待機しているのさ。」
「デストニアにはバーランドが必要なんだ。どんなに和平会議を続けようとも・・・歩み寄った結論など出るはずがないだろ。皇帝が3人の王子を連れて来たのだって、物見遊山の気持ちからに決まってるぜ。」
「和平会議の開催時の取り決めに従ってこんな貧弱な装備にさせられたけどさ、何だか心細いよ。なあ、そう思うだろ。」
「サラバンド東区の兵舎に都市警備隊が、西区の兵舎に近衛兵が寄宿しているんだ。近衛兵は軍のエリート部隊なんだけど、何だか気に食わぬヤツばかりだよ。あんたも会えば・・・きっと分かるさ。」
兵舎を出たシンビオス達は彼らの話をまとめた。
「どうやら、帝国の寄宿舎へ行くには覚悟が必要のようですね。」
「兵士達にも不安が広がっているようですし、早く和平会議がうまくまとまると良いですね。」
「それで、シンビオス様、どうします?西区の方へ行くんですか?」
「ブライバブル様の話では、行ってみるようにとのことだしね。」
「とにかく、気を付けましょう。」 |