16
トーティスの村では、小さな墓の前でチェスターがたった1人、うなだれていた。

「アミィ・・・。」

悲しみに打ちひしがれている彼にも、その音は聞こえた。

「!」

確かに、馬の駆ける足音が近付いてきていた。

「・・・・・・。」

じっと音に耳をすませていると、やがて足音が止まった。

「人が来る・・・。」

チェスターは物陰に身を潜めると、様子を伺った。

「また来たのか?・・・・・・アミィ・・・。今、お前の仇を取ってやるからな・・・。」

チェスターは決意を固めた。

その頃、クレスはなす術もないまま、兵士に連行されていた。

「ミゲールの息子を、捕らえてきました!」

クレスが連れて来られたのは、黒い鎧を着た男の前であった。

「ご苦労。」

黒鎧の男は、クレスを一瞥した。

「ふ、貴様のような若造が持っていたとはな・・・。」

「村を襲ったのはお前だな!!」

そう言ってクレスは、目の前の男を睨みつけた。

「だとしたら、どうだと言うのだ、弱き者よ。」

「くっ。」

すると男はクレスの胸元に手を伸ばした。

「!」

「かっ、返せ!!」

「このペンダントは、もらっておくぞ・・・。」

クレスからペンダントを奪った男は、兵士に命じた。

「おい、この若造の武器を奪って牢に入れておけ。」

そして男は1枚の鏡の前に立った。

鏡には、まるで死神のような姿をしたものが映っている。

「ふふ・・・。これでついに・・・。」

男の姿はクレスからも見えていた。

(な、何だ、あれは!?)

その後クレスは地下牢へと続く通路を歩かされ、やがて牢へと辿り着いた。

「よし、入れ!もたもたするな!!」

菱に思い切り突き飛ばされたクレスは、牢の中に倒れてしまった。

「長生きしたかったら、おとなしくしていることだな。」

そう言って番兵は立ち去って行った。

番兵がいなくなるとクレスは床から起き上がり、鉄格子の側まで歩いて行った。

「くそっ!!」

牢の隅には水が溜まっており、ひんやりと感じられた。

「素手じゃ無理か・・・。」

何とか抜け出す術はないかと考えたクレスだが、やはり自分1人ではどうすることもできなかった。

ふと奥の方に穴が開いているのを見つけたクレスは、近付いて行った。

「う〜ん、この穴からじゃ出られないな・・・。」

その時、かすかな声が聞こえた。

「私の・・・声が、聞こえますか。」

「?」

クレスは耳をすませた。

「何だ?今・・・、女の人の声がしなかったか?穴の向こうから女性の声が!」

「手をこちらへ・・・。」

やはり気のせいではない。

女性の声であった。

「誰・・・ですか?」

クレスの問い掛けにも答えることはなく、女性はひたすら同じ言葉を繰り返した。

「手をこちらへ・・・。差し伸べて下さい・・・。あなたの助けに・・・なりたいのです・・・。」

クレスが手を差し伸べると、小さな物を手渡された。

それは輝きを放っていた。

「・・・・・・。これは、イヤリング?」

「それを壁にかざして・・・。そして、牢屋に捕まっている女の子を助けてあげて・・・。あなたなら・・・きっと、館から出られるわ。」

「ちょ、ちょっと待って!あなたは・・・。」

「・・・お願い・・・。」

女性はそれ以上言葉を続けることはなかった。

「・・・・・・。とにかく、イヤリングをかざしてみよう。」

クレスはイヤリングをかざしてみた。

「!」

途端にイヤリングは目を開けていられない程の光を放ち、壁は大きな音を立てて崩れてしまった。

小さかった穴は、人が通れるくらいの大きさになった。

「これは・・・。さっきの人に会って、お礼を言わなければ・・・。」

穴をくぐり抜けて隣りの牢へと足を踏み入れると、1人の女性が奥の壁に鎖でつながれていた。

「そんな・・・。」

それは有り得ない光景だった。

「あの手の温もりは、何だったんだろう・・・。」

そして顔を歪めた。

「剣が突き刺さってる・・・。ひどいことを・・・。」

クレスは女性の体から剣を引き抜いた。

「どうか、安らかにお眠り下さい。・・・失礼します。」

クレスは女性から引き抜いたロングソードで、扉をこじ開けた。

「宝箱だ・・・。」

見つけた箱の中からバトルアクスを見つけたクレスは、今度はバトルアクスで扉をこじ開けると、更に進んで行った。

- 第16話完 -

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2006年7月14日更新