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トーティスの村では、小さな墓の前でチェスターがたった1人、うなだれていた。 「アミィ・・・。」 悲しみに打ちひしがれている彼にも、その音は聞こえた。 「!」 確かに、馬の駆ける足音が近付いてきていた。 「・・・・・・。」 じっと音に耳をすませていると、やがて足音が止まった。 「人が来る・・・。」 チェスターは物陰に身を潜めると、様子を伺った。 「また来たのか?・・・・・・アミィ・・・。今、お前の仇を取ってやるからな・・・。」 チェスターは決意を固めた。 その頃、クレスはなす術もないまま、兵士に連行されていた。 「ミゲールの息子を、捕らえてきました!」 クレスが連れて来られたのは、黒い鎧を着た男の前であった。 「ご苦労。」 黒鎧の男は、クレスを一瞥した。 「ふ、貴様のような若造が持っていたとはな・・・。」 「村を襲ったのはお前だな!!」 そう言ってクレスは、目の前の男を睨みつけた。 「だとしたら、どうだと言うのだ、弱き者よ。」 「くっ。」 すると男はクレスの胸元に手を伸ばした。 「!」 「かっ、返せ!!」 「このペンダントは、もらっておくぞ・・・。」 クレスからペンダントを奪った男は、兵士に命じた。 「おい、この若造の武器を奪って牢に入れておけ。」 そして男は1枚の鏡の前に立った。 鏡には、まるで死神のような姿をしたものが映っている。 「ふふ・・・。これでついに・・・。」 男の姿はクレスからも見えていた。 (な、何だ、あれは!?) その後クレスは地下牢へと続く通路を歩かされ、やがて牢へと辿り着いた。 「よし、入れ!もたもたするな!!」 菱に思い切り突き飛ばされたクレスは、牢の中に倒れてしまった。 「長生きしたかったら、おとなしくしていることだな。」 そう言って番兵は立ち去って行った。 番兵がいなくなるとクレスは床から起き上がり、鉄格子の側まで歩いて行った。 「くそっ!!」 牢の隅には水が溜まっており、ひんやりと感じられた。 「素手じゃ無理か・・・。」 何とか抜け出す術はないかと考えたクレスだが、やはり自分1人ではどうすることもできなかった。 ふと奥の方に穴が開いているのを見つけたクレスは、近付いて行った。 「う〜ん、この穴からじゃ出られないな・・・。」 その時、かすかな声が聞こえた。 「私の・・・声が、聞こえますか。」 「?」 クレスは耳をすませた。 「何だ?今・・・、女の人の声がしなかったか?穴の向こうから女性の声が!」 「手をこちらへ・・・。」 やはり気のせいではない。 女性の声であった。 「誰・・・ですか?」 クレスの問い掛けにも答えることはなく、女性はひたすら同じ言葉を繰り返した。 「手をこちらへ・・・。差し伸べて下さい・・・。あなたの助けに・・・なりたいのです・・・。」 クレスが手を差し伸べると、小さな物を手渡された。 それは輝きを放っていた。 「・・・・・・。これは、イヤリング?」 「それを壁にかざして・・・。そして、牢屋に捕まっている女の子を助けてあげて・・・。あなたなら・・・きっと、館から出られるわ。」 「ちょ、ちょっと待って!あなたは・・・。」 「・・・お願い・・・。」 女性はそれ以上言葉を続けることはなかった。 「・・・・・・。とにかく、イヤリングをかざしてみよう。」 クレスはイヤリングをかざしてみた。 「!」 途端にイヤリングは目を開けていられない程の光を放ち、壁は大きな音を立てて崩れてしまった。 小さかった穴は、人が通れるくらいの大きさになった。 「これは・・・。さっきの人に会って、お礼を言わなければ・・・。」 穴をくぐり抜けて隣りの牢へと足を踏み入れると、1人の女性が奥の壁に鎖でつながれていた。 「そんな・・・。」 それは有り得ない光景だった。 「あの手の温もりは、何だったんだろう・・・。」 そして顔を歪めた。 「剣が突き刺さってる・・・。ひどいことを・・・。」 クレスは女性の体から剣を引き抜いた。 「どうか、安らかにお眠り下さい。・・・失礼します。」 クレスは女性から引き抜いたロングソードで、扉をこじ開けた。 「宝箱だ・・・。」 見つけた箱の中からバトルアクスを見つけたクレスは、今度はバトルアクスで扉をこじ開けると、更に進んで行った。 - 第16話完 - BackNext |
2006年7月14日更新