15 |
伯父であるオルソンの家の前へやって来ると、クレスを見た犬が尻尾を振りながら迎えてくれた。 「ワン。」 「この大きな屋敷は、オルソンさんの家だよ。」 クレスのことを知らないおじさんが、親切にそう教えてくれた。 そしてこう続けた。 「何か、南の方に真っ黒な雲が立ち込めておったの。にわか雨でも降ったか・・・。」 真っ黒な雲とは、炎に包まれたトーティスの村から立ち昇ってたものに間違いなかった。 クレスは一瞬唇を噛み締めたが、すぐに気を取り直して玄関へ向かって叫んだ。 「ごめんくださ〜い。伯父さ〜ん、いませんか〜?」 その声を聞きつけて、すぐに伯父のクレスが顔を出した。 「クレス!」 伯父と伯母の2人が、クレスの元へとやって来た。 「伯父さん、伯母さん、お久しぶりです。」 「クレスも元気そうで何よりだ。ところで悪い噂を聞いたのだが、トーティスの村が襲われたというのは本当なのか?」 クレスは俯いてしまったが、はっきりとこう告げた。 「本当です。父さんも母さんも・・・。」 「そうか、それじゃあ噂は、本当だったのか・・・。」 「ええ・・・。」 オルソンの妻である伯母のジョアンは、クレスを慰めるように肩にそっと手を置いた。 「クレス、そう気を落とさないでね・・・。しばらくこの家に泊まっていくといいわ。」 「ご迷惑をおかけします。」 「気にすることはないよ。」 「ありがとうございます。」 「クレス、元気出してね。」 クレスは2人の言葉に感謝しつつ、伯父の家で世話になることにした。 「クレス、疲れているんじゃないか?もう休んだらどうだ?」 一息つくと、伯父が声を掛けてきた。 「いいえ。」 「遠慮することはない。休んでいきなさい。」 「はい。」 その夜・・・。 クレスはスースーと寝息をたてて眠りについていた。 窓の外ではふくろうが鳴いているのが聞こえてくる。 その時、オルソンに続いて兵士達が家の中へと入って来た。 「!」 いち早く異変を感じ取ったクレスはベッドから素早く飛び起きた。 「伯父さん、これは!?」 「・・・・・・すまない・・・。こうしなかったら、わしらはおろか・・・ユークリッドの都が、トーティスの二の舞になってしまうんだ。許してくれ・・・。」 伯父はクレスから顔を背けるようにして言った。 「さぁ、おとなしく我々に従ってもらおう。」 「くっ・・・。」 「さっさと歩け!!」 クレスはなす術もなく、連行されて行った。 「クレス、すまん・・・。」 後に残されたオルソンが心からクレスに詫びていると、1人の兵士が戻って来るのが見えた。 「何だ?まだ、何か用か?」 兵士はオルソンの耳元へと口を寄せると、何事かを伝えた。 「・・・・・・。」 それを聞いたオルソンは、一瞬言葉を失った。 「・・・・・・。」 「・・・まっ、まさか・・・。」 「悪く思うな・・・。」 「や、やめろ、やめてくれぇ!」 そしてオルソンの叫びが辺りに響いた。 - 第15話完 - |
2005年3月4日更新