第10話

「よくぞ来た!勇敢なるオルテガの息子、アルスよ!」
王様の声が響いた。
「既に母から聞いておろう。そなたの父オルテガは、戦いの末、火山に落ちて亡くなってしまった。しかしその父の後を継ぎ、旅に出たいというそなたの願い、しかと聞き届けたぞ!そなたならきっと父の遺志を継ぎ、世界を平和に導いてくれるであろう。敵は魔王バラモスじゃ!世界のほとんどの人々は未だ、魔王バラモスの名前すら知らぬ。だがこのままではやがて、世界は魔王バラモスの手に・・・・・・。それだけは何としても食い止めねばならぬ!
ここで王様の声がひときわ高く響き渡った。
「アルスよ、魔王バラモスを倒して参れ!」
「はい。精一杯頑張らせて頂きます。」
アルスは跪きながらはっきりと答えた。
「しかし1人ではそなたの父、オルテガの不運を再び辿るやも知れぬ。町の酒場で仲間を見つけ、これで仲間達の装備を整えるが良かろう。」
アルスは50Gといくつかの武器及び防具を受け取った。
「ではまた会おう!アルスよ!そなたの働きに期待しているぞ、アルスよ!」
アルスは城を出ると教会へと向かった。
教会では1人の老婆が祈りを捧げていた。
「おお、アルスかい。」
「こんにちは。」
「いよいよ旅立つのかい?」
「はい。」
「そうかい。アリアハンの国は海に囲まれた大陸なのじゃ。しかし、海の向こうにはもっともっと大きな大陸があるというぞ。それが本当なら・・・・・・死ぬまでに一度行ってみたいものじゃ。気をつけるんだよ、アルス。」
「はい、ありがとうございます。」
奥の祭壇では神父がアルスを出迎えてくれた。
「アルスさんももう16才ですね。」
「はい。」
「すっかり立派になって。いよいよ旅立ちの時を迎えたのですね。」
感慨深げにアルスを優しく見つめる神父の姿があった。
「ではお気をつけて。神のご加護のあらんことを。」
「ありがとうございます。神父様。」
アルスは神父に別れを告げると、ルイーダの酒場へと向かうことにした。
「町の中にいると、魔王が世界を滅ぼすなんてまるで嘘みたいだよねっ。」
こんな会話が聞こえてくる。
確かに町の中にいる限り、世界に危機が迫っていることなど全く感じられない。
「アルスさん。」
1人の男性が話し掛けてきた。
「町の外に出て長く歩けば、やがて夜になります。夜は魔物達の世界です。お気をつけなさい。」
そうなのだ。
例え町の近くであっても、夜になれば魔物達が徘徊する恐ろしい闇の世界へと変化を遂げるのだ。
「はい。気をつけます。」
アルスは今一度、気を引き締めた。

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