第11話

町の中には、人々が生活を営む上で欠かすことのできない井戸があった。
アルスは井戸を覗き込むと、底へと降りて行った。
井戸の底にも関わらず、そこには建物が建っていた。
アルスが中へと入って行くと、1人の男性が彼を迎えた。
「メダルの館へようこそ!ここのご主人はああ見えてもとても偉大なお方。きっとあなたのお役に立ちましょう。」
「随分と沢山の本があるんですね。少し見せて頂いても宜しいですか?」
「ええ、構わないでしょう。ここのご主人はああ見えてもとても偉大なお方ですから・・・。」
「どうもありがとうございます。」
(あれ?これは何だろう?)
アルスが本棚を眺めていると、紙切れがはみ出しているのが見えた。
早速引っ張り出してみる。
(なになに?メダルの賞品リスト?ええーっと・・・、棘の鞭が5枚に、ガーターベルトが10枚、刃のブーメランが20枚、力の指輪が30枚、インテリ眼鏡が35枚、忍の服が50枚に・・・、正義のそろばんが60枚、疾風のバンダナが70枚、ドラゴンクロウが80枚、復活の杖が90枚、神秘のビキニが95枚、ゴールドパスが100枚か。中にはよく分からないものもあるけど・・・。そういえば、さっきメダルを1枚見つけたんだ。このメダルのことかな?とにかく、ご主人に会ってみよう。)
奥へと進んで行くと、1人の兵士がたたずんでいた。
「自分でも何故か分からないのだが、ここの主人と会った時、まるで守るべき王様のように感じて・・・。こうしてついて来てしまったのだ。もしかしたらいつか、魔王にすら恐れられる大物になりそうな・・・、そんな気がして仕方ないのだよ。」
この兵士にそんな気を起こさせる人物とは一体どんな人間なのだろう?
アルスはそのご主人に興味が湧いてきていた。
「よくぞ来た!わしは世界中の小さなメダルを集めているおじさんじゃ。」
実際に会ってみた人物は、にこやかにアルスを迎えてくれた。
「僕はアルスと言います。あなたがこの館のご主人ですね。」
「まあ、そうだな。ところでわしはメダルが大好きでな。もしメダルを見つけてきた者には、わしのなけなしの褒美を取らせよう!」
「あの、このメダルで良いのでしょうか?」
「ん?何と、メダルを持って来たか!どれ、おじさんが預かろう!」
アルスは1枚のメダルを差し出した。
「ふむ。これが5枚になった時は棘の鞭を与えよう。頑張って集めるのじゃぞ!」
「はい。ありがとうございます。」
アルスは主人に別れを告げると、再び井戸を登って行った。

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