第12話

井戸の側に立っていた老人が、アルスに話し掛けてきた。
「このアリアハンの城の西にポッカリと浮かぶ島をもう見なさったか?」
「いいえ。」
「城から西に行けばすぐに見られるはずじゃ。」
「そうですか。今度見てみます。」

町の中は人々の賑やかな会話であふれかえっていた。
「オレは見回りの兵士さ!町に何かあっても、オレがいるから大丈夫!安心して旅を続けてくれよな!」
「ありがとうございます。」
アルスは兵士に礼を言うと、情報集めのため更に町の中を歩いて回った。

「ここはアリアハンの城下町。北に行くと、レーベの村がありますわ。」
親切な女性が教えてくれた。
町の案内係なのだろう。
「どうもありがとうございます。」
(まずはレーベの村へ行ってみるかな。)

「お城は夜になると閉めてしまいます。王様に会えるのは、昼間だけですよ。」
「王様に会えるのは昼間だけなんですね。どうもありがとうございます。」

アルスが武器屋へ入っていくと、1人の戦士が近付いて来た。
「あなたがあの勇敢だったオルテガの息子さんか?」
「はい、確かに父はオルテガですが・・・。」
「あなたのお父上は、それはそれは立派な勇者でしたぞ!」
「はい。僕も立派だったと聞いています。」
「お父上の無念を立派に晴らして下され。」
「はい、頑張ります。」
そう言ってアルスは、武器屋を出た。

「かつてこの国アリアハンは、全ての世界を治めていたのじゃ。しかし色々な戦争があってな。多くの人々が戦いで命を落とした。それからは、海の向こうに通じる旅の扉を封じ込めたということじゃ。」
「旅の扉?そんな物があるんですか。」
「そうじゃ。旅の扉を見つけない限り、海の向こうには渡れないということじゃな。」
「どうもありがとうございました。」
(旅の扉・・・一体どこにあるんだろう?)
そう考えながら、アルスは宿屋へと向かった。

宿屋の2階へ上がると、体中に包帯を巻いた男性がベッドの上で唸っていた。
「オ、オレは海の向こうに・・・い、行きた・・・かった・・・・・・のに・・・。う・・・ぐぐ・・・・・・。」
(一体どうしたんだろう?)
疑問に思いながら向かいの部屋へと向かうと、その部屋にいた男性がその理由を詳しく教えてくれた。
「前の部屋の男は、魔法の玉というのを作ろうとして失敗したらしいですよ。あんなケガをするなんて、よっぽど物騒な物なんでしょうね。」
もうすっかり夜である。
アルスはそろそろ家へ戻ることにした。

「お帰りなさい、アルス。王様にはキチンと挨拶できた?」
エレンが心配そうに言った。
「うん、何とかね。」
「そう。それなら良かったわ。アルスがあがってしまって何か失敗をしないかと、母さんは心配してたのよ。でもいらぬ心配だったわね。アルスはもう立派に一人前ですものね。」
夕食を食べながら2人は、母子2人きりの会話を楽しんだ。
食事が終わるとエレンが言った。
「ともかく今日は疲れたでしょう。さあ、もうお休み。」
「うん。お休みなさい、母さん。」

次の日の朝は綺麗に晴れ渡っていた。
「おはよう。もう朝ですよ、アルス。朝食の用意もできているわよ。」
「頂きます。」
パンとハムエッグ、そしてスープという朝食を済ませるとエレンが見送ってくれた。
「さあ、行ってらっしゃい。」
「行ってきます。あっ、その前にお爺ちゃんに挨拶してこなくちゃ。」
アルスは2階の祖父の部屋へ駆け上がって行った。

「お前の親父、オルテガは立派な勇者じゃった。この爺の息子じゃ!アルス!お前もこの爺のマゴじゃ!頑張るのじゃぞ。」
「はい。行ってきます。お爺ちゃん!」
(旅の扉かあ・・・まずはレーベの村で何か知っている人がいないか聞いてみるかな。)
階段から降りて来たもののなかなか出掛けようとしないので、不審に思ったエレンが声を掛けた。
「どうかしたの、アルス?冒険に出るのが辛いの?」
「ううん、そんなことないよ。」
「そう!あなたには勇者オルテガの血が流れているのですものね!さあ、お行きなさい!勇敢で立派だった父さんのように・・・・・・。」
アルスは家を出ると、一緒に冒険してくれそうな仲間を求めてルイーダの酒場へと向かった。

<---BackNext--->

Back