第16話

「スライムだよっ!」
シリウスの声にいち早く反応したユンが素早く攻撃を仕掛けた。
「きゃあっ。」
「ルーシア!」
先程の戦闘のせいでかなり疲労の色を見せていたルーシアは、スライムの攻撃を受けて瀕死の状態になってしまった。
「急いでスライムを倒すんだ!」
彼らにはもう、傷を癒すだけのMPは残されておらず薬草も使い果たしてしまっていた。
何とかしてこの場をしのぐには、モンスターを倒してしまうしかなかった。
「たあっ。」
「行っけえ!」
「ふう・・・。何とか倒せたみたいだね。」
「ルーシア、大丈夫か?」
「何とか・・・大丈夫よ・・・。」
「もうすぐアリアハンだ。もう少しの辛抱だからね。」
「うん。」

ようやく町に辿り着いた一行は、すぐにアルスの家へと向かった。
「お帰りなさい、アルス。さぞや疲れたでしょう。」
「ルーシアが・・・。」
「まあ、大変。ゆっくり休むのよ。」
休んだお陰で元気を取り戻したルーシア達と、アルスはレーベの南の洞窟へと向かった。

すると途中で、おおがらすの群れに出会った。
「おーい、みんなー。集まれ〜。」
「ちょっと、シリウス。何言ってるのよ?」
「あれ?おっかしいなあ。予定では遊び仲間が来るはずなんだけど。さすがにここまでは来れないか。ははは・・・。」
これまで真面目に戦闘に参加していたシリウスも、しょせんは遊び人であった。
「ほんとにもう。強い敵じゃなかったから良かったものの。」
「ごめんよう。」
シリウスはルーシアに叱られながらも、あまり反省している様子はなさそうである。
「でも今の戦闘でメラを覚えたみたいだ。剣が効かない敵には役に立つかもしれない。」
「それは良かったわね。私は魔法が使えないから、助かるわ。」
ユンが嬉しそうに微笑んだ。
次に出会ったのはスライムであった。
しかしどうやらスライムは突然のことに驚き、とまどっているようで硬直していた。
「チャンスだあ!」
何と、シリウスはいきなり逃げ出そうとした。
「ちょっと、何やってるのよ。」
すぐにルーシアに引き戻される。
「ちょっとした出来心だってばあ。」
「全く、しょうがないわねえ。」
その後もシリウスは微笑んで皆の戦いぶりを眺めているだけであった。
「もう、ほんとにシリウスったら!」
ルーシアはかなり腹を立てているらしい。
「ルーシア、シリウスにも悪気はないんだから。」
アルスがなだめるが、彼女の腹の虫はなかなか治まりそうもなかった。
「じゃあ、町へ戻って盾を買おう。」
アルスはルーシアのために、皮の盾を購入した。
「これなら私でも持てるわね。」
少し機嫌を直したルーシアが、久しぶりに笑顔を見せた。

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