「ねえねえ、アルス。前に入れなかった扉があったよね。盗賊のカギで入れないかな?」
シリウスが期待に満ちた眼差しで言った。
「ねえ、試してみない?」
ユンもそう勧めてきた。
「そうだね。試してみようか。」
アルスが鍵穴に盗賊のカギを差し込んでみると、鍵穴にぴったりとはまった。
「やったあ!」
扉の中に足を踏み入れると、宝箱が並んでいた。
「うわあ!お宝だよー。ねえ、早く開けてみようよ!」
「もう、シリウスってば落ち着いてよ。」
ルーシアは冷静である。
「こちらの宝箱には・・・素早さの種だ。」
「やっほー!すごい、すごい!」
シリウスはピョンピョンと飛び跳ねている。
「これはルーシアに・・・。」
「そうね。いざという時に、素早くホイミを唱えてもらわないと。」
「ありがとう、アルス。遠慮なく頂くわ。」
「こっちは木の帽子だよ。」
「じゃあこれはシリウスが装備して。」
「ありがと、アルス。」レーベの村へ辿り着いたアルス達は、盗賊のカギについて教えてくれた男性に声を掛けられた。
「盗賊のカギは手に入れましたか?」
「はい。」
「それは良かったですね。」
「ありがとうございます。」
宿屋でアルス達は1人の戦士から、気になる話を聞いた。
「ここより東に旅をし山を越えると、小さき泉があるという。かつてはその地より、多くの勇者達が旅立ったそうだ。」
「もしかしたら、父さんもそこから旅立ったのかもしれない。」
「きっとそうね。」
「行ってみようよ。」
「うん。」
「そういえば、前に来た時にカギがかかって入れなかった家があったよね。このカギで入れないかな?」
「そうだけどカギをかけているっていうことは、入って欲しくないんじゃないの?」
「そうよ。」
「うーん、でも気になるよね。もしかしたらものすごーい情報が入手できるかもしれないしさ。」
シリウスは興味津々といった様子である。
「分かったわ。でもくれぐれも変な真似はしないようにね。」
「もちろんだよ。僕のことを疑うの?ルーシア。」
「だってシリウスが疑われるような行動ばかりとるからじゃない。」
「ひっどいなー。だって僕は遊び人だから、ある程度の遊び心は理解してもらわないと。」
「ある程度ですって?よく言うわ。」
「まあまあ、ルーシア。シリウスもそのくらいにしようよ。」
アルスになだめられながら、一行はカギを使って1軒の民家へと足を踏み入れた。
「お邪魔しまーす。」
「うっわー。大きなカマがあるよ。何だか湯気が立ち昇っているけど。何が入っているのかな?」
シリウスが覗き込んでみると、中には何やら不思議な液体が煮え立っていた。
「お家の人はどこかしら?」
「2階へ行ってみよう。」
2階では老人が暮らしていたが、突然の侵入者に驚いて尋ねてきた。
「ん?何じゃお前さんは?わしの家にはカギをかけておいたはずじゃが、どうやって入ってきた?」
「あ、あの、申し訳ありません。カギを開けさせてもらいました。」
そう言ってアルスが恐る恐るカギを見せると、老人は目を見開いた。
「何と!それは盗賊のカギ!するとお前さんがあの勇者オルテガの・・・・・・!」
「はい。息子のアルスと申します。」
「そうじゃったか・・・・・・。であれば、これをお前さんに渡さねばなるまい。」
そう言って老人はアルスに玉を手渡した。
「これは・・・?」
「それは魔法の玉と呼ばれるものじゃ。その玉を使えば、旅の扉への封印が解けるはずじゃ。」
「どうもありがとうございます。」
「気を付けて行くのじゃぞ。」
「はい。」
「海の向こうの国々では、アリアハンからの勇者を待ち望んでいるはずじゃ。是非とも彼らの助けになってやって欲しいのじゃ。」
「分かりました。」
アルス達は礼を述べると、老人の家を後にした。
「ほら、やっぱりすごーい情報とアイテムが手に入っただろ?」
シリウスは得意そうである。
「そうだね。」
そう言ってアルスは微笑んだ。 |