第21話

その後アルスは武器屋で購入した皮の帽子を装備した。
「一度アリアハンへ帰ることにしよう。」
「わーい!」
「シリウスったら随分嬉しそうね。」
「だってアルスの家の食事っておいしいんだもん。」
「もうー、アルスの家にご厄介になる気でいるわね。」
「だってー。」

アリアハンへ辿り着く頃には、すっかり夜になっていた。
「ねえねえアルス、ルイーダの酒場へ行ってみようよー。」
シリウスに引っ張られながら、アルス達はルイーダの酒場へと向かった。
「まずは2階から。」
そう言うとシリウスは、さっさと2階へ上がって行ってしまった。
「全くシリウスにも困ったわね。」
ルーシアは相も変わらずため息をついている。
「もう病気だから仕方ないわよね。」
ユンはもう諦めきっているようだ。
酒場の2階では男性がうつらうつらと居眠りをしていた。
辺りは静かで、平和そのものである。
「にゃ〜ん。」と甘えたような声で鳴いている猫がこちらを見ている。
「夜なのに何だかつまらないなあ。やっぱり町の中を歩いてみようよ。」
アルス達は酒場を後にした。

地面で寝転がっている男性が、声を掛けてきた。
「おう!昼間酒場で会った兄ちゃんじゃねえか!」
「そうだったっけ?」
シリウスがきょとんとしていると、男性は気を悪くした様子もなく言葉を続けた。
「まあどっちでもいいや。月を見ながら飲む酒は最高だよ。うーいっ、ひっく!」
「すっかり出来上がっているみたいね。」
ユンがルーシアにこそこそと耳打ちした。
「確かに綺麗な夜空ですものね。」

武器屋の前を通りかかると、主人が片付けをしているところだった。
「今日はもう店じまいだ。家でゆっくり眠って、明日また来ておくれ!」
「なーんだ、残念!他の所へ行こうよ。」

シリウスに促され、アルス達はとある家の前を通りかかった。
昼の間はずっと、男性が立ちはだかっていた家だった。
「こんな夜更けに何のご用ですかな?」
父親は少し不機嫌そうである。
「いいの?家に帰らなくて。お母さんが心配しているわよ。」
「もうすぐ帰ります。すみません。」
アルスは謝るとその場を後にしようとしたが、洋服の裾を引っ張るものがあった。
「?」
アルスが振り返ると、女の子が泣きながら言った。
「え〜ん。夜は暗くて怖いよおー。だから早く眠るの。寝て起きたら朝だもんね。」
「ふふっ、かわいいわね。」
ルーシアがその様子を見て微笑んだ。
「大丈夫よ。すぐに朝になるからね。」
ユンが女の子の頭を優しく撫でながら言った。
「うんっ。じゃあね、お姉ちゃん。」
女の子に見送られ、アルス達は夜のアリアハン城へと向かった。

「王様は既にお休みのはずだ!」
「今夜は宿に泊まるなどして、朝になったら来るが良い。」
見張りの兵達に入城を止められてしまった。
「じゃあこっちから入ったらどうかな?」
シリウスが別の入り口へと向かうと、ここでも兵士が立ち塞がった。
「むむっ、盗っ人か!」
「いいえ、違います。申し訳ありません。すぐに立ち去りますので。」
アルスが急いで謝ると、兵士は表情を和らげて言った。
「・・・・・・何だ、お主か。もう夜も更けた。また明日来ることだな。」
「はい。失礼します。」

アルス達が家へ戻ると、家の前で母親のエレンが待っていた。
「まあ、遅かったのねっ。でも無事で本当に良かったわ!さあ、早く家の中へ入りましょう。」
2階では祖父が眠っていた。
「オルテガ!わしの息子よ・・・何でお前は・・・・・・ぐうぐう・・・・・・。」
寝ている時でも息子のことを考えている祖父を見て、アルスはわずかに涙ぐんだ。
「さあ、もうお休み。お友達もご一緒に・・・・・・。ゆっくり休むのですよ。」
温かい食事を済ませたアルス達は、心地良いベッドの上で安らかな眠りに就いた。

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2004年8月27日更新