その後アルスは武器屋で購入した皮の帽子を装備した。
「一度アリアハンへ帰ることにしよう。」
「わーい!」
「シリウスったら随分嬉しそうね。」
「だってアルスの家の食事っておいしいんだもん。」
「もうー、アルスの家にご厄介になる気でいるわね。」
「だってー。」アリアハンへ辿り着く頃には、すっかり夜になっていた。
「ねえねえアルス、ルイーダの酒場へ行ってみようよー。」
シリウスに引っ張られながら、アルス達はルイーダの酒場へと向かった。
「まずは2階から。」
そう言うとシリウスは、さっさと2階へ上がって行ってしまった。
「全くシリウスにも困ったわね。」
ルーシアは相も変わらずため息をついている。
「もう病気だから仕方ないわよね。」
ユンはもう諦めきっているようだ。
酒場の2階では男性がうつらうつらと居眠りをしていた。
辺りは静かで、平和そのものである。
「にゃ〜ん。」と甘えたような声で鳴いている猫がこちらを見ている。
「夜なのに何だかつまらないなあ。やっぱり町の中を歩いてみようよ。」
アルス達は酒場を後にした。
地面で寝転がっている男性が、声を掛けてきた。
「おう!昼間酒場で会った兄ちゃんじゃねえか!」
「そうだったっけ?」
シリウスがきょとんとしていると、男性は気を悪くした様子もなく言葉を続けた。
「まあどっちでもいいや。月を見ながら飲む酒は最高だよ。うーいっ、ひっく!」
「すっかり出来上がっているみたいね。」
ユンがルーシアにこそこそと耳打ちした。
「確かに綺麗な夜空ですものね。」
武器屋の前を通りかかると、主人が片付けをしているところだった。
「今日はもう店じまいだ。家でゆっくり眠って、明日また来ておくれ!」
「なーんだ、残念!他の所へ行こうよ。」
シリウスに促され、アルス達はとある家の前を通りかかった。
昼の間はずっと、男性が立ちはだかっていた家だった。
「こんな夜更けに何のご用ですかな?」
父親は少し不機嫌そうである。
「いいの?家に帰らなくて。お母さんが心配しているわよ。」
「もうすぐ帰ります。すみません。」
アルスは謝るとその場を後にしようとしたが、洋服の裾を引っ張るものがあった。
「?」
アルスが振り返ると、女の子が泣きながら言った。
「え〜ん。夜は暗くて怖いよおー。だから早く眠るの。寝て起きたら朝だもんね。」
「ふふっ、かわいいわね。」
ルーシアがその様子を見て微笑んだ。
「大丈夫よ。すぐに朝になるからね。」
ユンが女の子の頭を優しく撫でながら言った。
「うんっ。じゃあね、お姉ちゃん。」
女の子に見送られ、アルス達は夜のアリアハン城へと向かった。
「王様は既にお休みのはずだ!」
「今夜は宿に泊まるなどして、朝になったら来るが良い。」
見張りの兵達に入城を止められてしまった。
「じゃあこっちから入ったらどうかな?」
シリウスが別の入り口へと向かうと、ここでも兵士が立ち塞がった。
「むむっ、盗っ人か!」
「いいえ、違います。申し訳ありません。すぐに立ち去りますので。」
アルスが急いで謝ると、兵士は表情を和らげて言った。
「・・・・・・何だ、お主か。もう夜も更けた。また明日来ることだな。」
「はい。失礼します。」
アルス達が家へ戻ると、家の前で母親のエレンが待っていた。
「まあ、遅かったのねっ。でも無事で本当に良かったわ!さあ、早く家の中へ入りましょう。」
2階では祖父が眠っていた。
「オルテガ!わしの息子よ・・・何でお前は・・・・・・ぐうぐう・・・・・・。」
寝ている時でも息子のことを考えている祖父を見て、アルスはわずかに涙ぐんだ。
「さあ、もうお休み。お友達もご一緒に・・・・・・。ゆっくり休むのですよ。」
温かい食事を済ませたアルス達は、心地良いベッドの上で安らかな眠りに就いた。 |