第2話
やがてカエルは、橋の上に上がって来た。 セティが驚いて振り返ると、更に驚くべきことにそのカエルが言葉を発した。 「あ!驚かないで・・・・・・。私はカエルではありません。」 (え?だってどう見てもカエル・・・・・・。) 「あ!今どう見てもカエルだって思いましたね?」 セティの考えを見透かしたかのように、カエルが言葉を続ける。 「・・・はい。」 「あなたは正直な人ですね。その正直さを見込んでお願いがあります。」 「え?お願い・・・ですか?」 「もう察しているとは思いますが、実は私はある国の姫でした。しかし悪い魔法使いに呪いをかけられ、このような姿にされてしまったのです。まあ、なってしまったものは仕方がないし、カエルも思ったほど悪くはありません。そんなわけで毎日呑気に暮らしていたのですが・・・・・・、困ったことがあります。それは・・・・・・・・・・・・。それは・・・・・・・・・・・・・・・・・・。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」 「?」 何か言いづらいわけなのであろうか? なかなかその先を言おうとしないカエルを、セティは不思議そうに見つめた。 「あ!いけない。誰か来るわ!」 そう言うと突然カエルは慌てるように、地下室へと入って行ってしまった。 セティも後を追って地下室へと入って行った。 ところが中にいたのはカエルではなく、アルスのよく知る少女であった。 「あ、セティ。剣の稽古、もう終わったみたいね。ん?どうかしたの?」 辺りを見回しているセティを見て、その少女、シンシアが尋ねる。 「今、ここに大きなカエルが来なかった?」 「え?大きなカエル?何のことかしら・・・・・・。私はずっとここにいたけど、カエルなんて見な・・・・・・、見、見なか・・・・・・。 」 そう言うとシンシアは、突然体を震わせて笑い出した。 「うぷ!あはははは、あははは・・・・・・、もう駄目!!セティが見たのはこのカエルでしょう。」 シンシアはモシャスを唱えると、大きなカエルに姿を変えた。 呆気に取られているセティを前に、シンシアは言葉を続けた。 「呑気に暮らしていたのですが、困ったことがあります。それは・・・・・・。それは・・・・・・・・・・・・。」 シンシアは元の姿に戻ると、セティに向かって頭を下げた。 「って、ごめんなさい。実はそれ以上思い浮かばなかったの。もう少しちゃんと先の話まで考えてからやれば良かったんだけど、セティに早く見せたかったのね。びっくりしたでしょ!私、いろんな物に姿を変えられるモシャスの呪文を覚えたのよ!」 そう言ってシンシアはモシャスを唱えると、うさぎに姿を変えた。 「じゃあ私、行くわ!」 行きかけて立ち止まると、シンシアは再びセティの方を振り返った。 「あ!そうそう!セティのお母さんが呼んでたわよ。もう夕食だって。じゃあセティ、また明日ね!」 うさぎ姿のシンシアはそう言ってピョンピョンと跳ねて行った。 |