第4話
これはバトランドという、小さな国の王宮戦士の物語。 ライアンもその王宮戦士の1人だった。 ある朝王は、戦士達をお城の広間に呼び集めた。 「これより王様からそなた達にお話がある。心して聞くように。」 大臣の言葉の後で、王が奥から姿を現した。 戦士達が畏まって跪いて頭を垂れる。 「皆の者、楽にして良いぞ。」 その言葉に戦士達は一斉に起立した。 王が言葉を続ける。 「さて、話というのは他でもない。最近子供達がいなくなるという噂は、お前たちも聞いておろう。今朝もイムルの村より、母親達が涙ながらに訴えてきておる。何ゆえ子供がいなくなるのか?何者かがさらっているのか!?この国の王として、もはや放っておくわけにはいかぬ。事の真実を確かめ、このわしに報告せよ!」 「はっ!」 「行け!我が戦士達よっ!」 戦士達は一斉に謁見の間を後にした。 ところが、1人の母親がライアンに向かって走り寄って来た。 「戦士様!お願いです。どうか私達の子供を捜して下さい。あの子はまだ生きています。ああでも、急がないと手遅れになってしまう。そんな気が・・・・・・。」 「ご安心を。精鋭の戦士達が向かったので大丈夫ですぞ。」 「宜しくお願い致します。戦士様。」 そう言って母親は去って行った。 ライアンを慕っている王宮の兵士達は、任務に出掛けるライアンに色々と助言を与えてくれた。 「ライアン殿。戦いで傷ついたら、ムリせず町に戻り宿に泊まるのですぞ。」 「長旅になりそうなら、道具屋で薬草を買って行くといい。備えあれば憂い無しだ。」 兵士達と会話しているライアンを見かねて、大臣がせかすように言った。 「ささ、何をしておる。早く行かぬか。他の戦士達に遅れを取るぞ。」 しかし王は別段怒ったふうでもなく、ライアンに自ら声を掛けた。 「おお、そなたはライアンじゃな。この度の事件、全くどうなっておるのやら・・・・・・。だが根気良く人々の声に耳を傾ければ、自ずと真実が見えてくるはずじゃ。そなたの活躍を期待しておるぞ。ライアンよ。」 「はっ、ありがたきお言葉。このライアン、必ずや使命を果たしてみせますぞ。」 ライアンは王に挨拶を済ませると、再び歩き始めた。 ところが1人の兵士がライアンをからかうように声を掛けてきた。 「よう、ライアン!まだこんな所をウロウロして、相変わらずのろまだな。他の連中はイムルの村に行ったんじゃないのか?」 「私も町の者に話を聞いてから出掛けるつもりだ。」 「まっ、のろまにはのろまなりの任務の遂行の仕方があるってことか。せいぜい他の連中に遅れを取らないように頑張るんだな。」 しかしライアンは彼の言葉を無視して立ち去ってしまった。 城には様々な人々が王との謁見を求めてやって来ていた。 「前は夜しか出なかった魔物が昼間も出るようになったとか。物騒な世の中ですわい。」 商人風の男性がそう教えてくれた。 (子供達に何もなければ良いが・・・。) そう考えていると、やはり子供が行方不明になったのであろうか? 1人の女性が話し掛けてきた。 「ライアン様。どうか、他の戦士達に遅れを取らぬよう頑張って下さいまし。」 「分かりました。」 控え室には、先程ライアンを頼ってきた女性と夫がいた。 「私達はイムルの村からやって来ました。しかしここに辿り着くまで魔物共に襲われ、何度死に掛けたことか。」 夫は震えながら言った。 城には様々な知識を持った老人がいた。 ライアンはその老人の所へ行ってみることにした。 老人は、熱心に本を読んでいた。 「おお、ライアン殿か。いや何、気になることがあってな。ちょっと調べておるんじゃよ。地獄の帝王なるものを、ライアン殿はご存知か?」 「初めてお聞きしますが。」 「名前だけは古い本に出ておったんじゃが、詳細はどこにも載ってなくてのう・・・・・・。もう少し調べてみようと思っておるのじゃ。」 「それは気になりますな。どうか、ご無理をしない程度に頑張って下さい。」 ライアンはそう言って、手近にあった本を何気なくパラパラとめくってみた。 その本のタイトルには、『バトランドの歴史』と書かれていた。 「なになに?『バトランドの開祖バトレアは、まだ集落でしかなかった当時のバトランドを魔物達から守った。その際、天の神から授かった盾でバトレアは魔物のあらゆる攻撃から身を守ったという・・・・・・。』そのような盾が本当にあるのだろうか?」 盾のことが気になりながらも先を急がなくてはならないと思い、ライアンは本を閉じた。 数人の兵士に話を聞いた後に城を出ようと決心し、ライアンは兵士達に近付いて行った。 「子供達が姿を消す事件が増え始めたのはつい最近だ。一体何者の仕業だろう?」 「町の外で歩き続けるとやがて日は沈みましょう。夜は昼以上に魔物が活発に動き回ります。お気をつけ下さい。」 城の入り口では2人の兵士が見張りとして立っていた。 「ここはバトランドのお城。」 「怪しい者は一歩たりとも通しはせぬ!」 ライアンは城の外へと向かった。 |