第7話

近くには立て札が立てられていた。

「怪しい者を見つけたらお城まで! バトランド王」

このように書かれている。

王宮の戦士とはいえ、ライアンに実戦経験はまだなかった。

まずは腕慣らしに近くのモンスター相手に戦ってみることにした。

スライムやはさみくわがた、大ミミズらを相手に戦闘を繰り返し、たまったお金で木の帽子を購入した頃にはすっかり夕方になっていた。

大ミミズとの戦闘後、ライアンは宝箱を見つけた。

開けてみると、中には薬草が入っていた。

(これは助かった。)

屈強な戦士であるライアンでも魔法を使うことはできないため、傷の回復には薬草が必須だった。

いくらあっても困ることはない。

(そろそろ夜だな。城下町へ戻ることにしよう。)

夜になると同じ城下町とはいえ、昼間とはまた違った様子を見せている。

武器屋の主人は何故か、外の草の上に寝転がっていた。

「え?子供がいなくなる事件について心当たりはないかって!?」

ライアンが事件の手がかりを尋ねてみると、主人は呆れたように言った。

「バカだねあんたも。そんなの魔物がさらっていったに決まってるじゃないか。」

いかにも当然といった風である。

夜とはいえ、まだ起きている人々も見られた。

ライアンはもう少し話を聞いてみることにした。

「キシャー!」

突然の声にモンスターだろうかと慌てて振り返ると、何とその正体は猫であった。

(猫1匹に驚いているようでは、まだまだだな。)

今晩は星が美しいせいか、武器屋の主人の他にも草の上で寝転がっている男性がいるのが見えた。

「・・・・・・ううっ。早く雨露をしのげる家で寝られるようになりたいです。」

どうやら仕方なく外で寝転がっているらしかった。

行方不明だというアレクスの家の前には1人の老人が立っていた。

「この家の奥さんは長い間、帰らぬ夫を待ってるそうじゃ。かわいそうにのう・・・・・・。」

「その話は私も聞きました。一日も早く戻られると良いですね。私も何か手がかりがあったらお知らせするようにします。」

「わしからもお願いしますじゃ。」

ライアンは次に防具屋へと足を向けた。

「今日はもう店を閉めました。何か欲しいのなら、また明日来て下さい。」

どうやら今日はもう店じまいのようである。

ライアンが2階へ上がって行くと、防具屋の息子がしくしくと泣き声をあげていた。

「どうしたのかな?」

ライアンが優しく話し掛けると、少年はぐすぐすと鼻をこすりながら言った。

「え〜ん。おしっこがしたいよう・・・・・・。でも1人で行くのは恐いよう。」

隣りで寝ている母親はすやすやと寝息を立てており、目を覚ましそうになかった。

「では私が一緒に行ってあげようか?」

「ぐす・・・本当?」

「ああ。」

「ありがとう・・・。」

ライアンは少年の手を引いて、トイレに付いて行ってあげた。

防具屋を出て近くの民家へ入って行くと、2人の男性が深刻そうな顔で話し合っていた。

「近頃、魔物共がチカラをつけてきたような気がするのだ。」

戦士風の男性が言うと、もう1人が相槌を打った。

「ふーむ。魔物がチカラをか。どこかで良からぬ事が起こってる証かのう・・・・・・。」

確かに何か良からぬ事が起こっているような予感は、ライアンにもあった。

実際、以前と比べて魔物達が力をつけてきているというのは事実であった。

アレクスの家へ向かったライアンは、フレアを力づけるべく声を掛けた。

「しかし夫は必ず帰ってきますわ。アレクスは私なしでは生きてゆけない人なんです。でも戦士様、もし旅先で夫のアレクスを見かけたら私に知らせて下さいまし。」

「もちろんです。」

しかしフレアに恋慕しているらしい道具屋の主人がこっそりとつぶやいている声を、ラインは聞いてしまった。

「どれだけ待つ気なんだろう?いい加減諦めて、この私と再婚すればいいのに・・・・・・。」

(そろそろ休むとするか。)

ライアンは宿屋へと向かった。

宿屋では、ターバンを被った商人風の男性がぐうぐうといびきをかきながら眠っていた。

「旅人の宿屋へようこそ。こんな夜更けまでお疲れ様でした。」

宿屋の女主人が笑顔でライアンを迎えてくれた。

「一晩4ゴールドですが、お泊まりになりますか?」

「宜しくお願いします。」

「それではごゆっくりお休み下さい。」

宿屋のベッドで体を休めると、翌朝には昨日の疲れはすっかり吹き飛んでいた。

「おはようございます。では、行ってらっしゃいませ。」

町の外へ出たライアンは、今後のために武器や防具を充実させようと考えた。

しかしそれにはとてもではないが資金が足りないため、近くでモンスター相手にもう少し戦って行くことにした。

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