第8話

戦闘を繰り返していると、いつの間にか夜になっていた。

お金もだいぶたまってきたので、装備もより良い物を揃えることができた。

「くっ。」

バブルスライムと戦っていた時に、ライアンは毒を受けてしまった。

毒消しを持っていなかったため、足を引きずるようにして教会へと向かった。

「毒を取るのじゃな?」

「はい。」

「さすれば我が教会に5ゴールドのご寄付を。宜しいですかな?」

「はい、宜しくお願い致します。」

「おお神よ、お力を!ライアンより毒の穢れを消し去りたまえっ!」

神父の力によってライアンの体は驚くほど楽になった。

「ありがとうございました。」

(これからは薬草だけではなく、毒消し草も持つようにしないといけないな。)

そう反省しつつ、次に向かったのは西の洞窟であった。

洞窟内には宝箱が点在しており、ライアンは薬草やお金を手に入れつつ、先へと進んで行った。

「おおライアン!」

何者かの声がライアンを呼び止めた。

見ると、ライアンと同じくバトランドの戦士であった。

「私もこれからイムルの村へ行くところなのだ。」

「そうですか。私も少しこの辺りを探索してから出掛けます。」

「そうか。お互いに頑張ろう、ライアン。」

そう言って彼はライアンよりも一足先に進んで行ってしまった。

しばらくしてライアンが洞窟から出ると、外は夕方になっていた。

(洞窟の中にいると時間の感覚がなくなってくるな。)

そう思いつつ、目の前の立て札に目をやる。

(『森の中では遊ばないように。』か。子供達は遊びたい盛りだからな。分からなくもないが・・・。)

イムルの村へと足を踏み入れると、ライアンの姿を見るなり男性が喜んで駆けつけてきた。

「ややっ、戦士様!ようこそイムルの村に。」

「よく来て下さいました、戦士様。こんなこと、子供を探す手がかりにはならないでしょうけど・・・・・・。あの子は私の目の前で、パッと消えるようにいなくなったんです。」

消えた子供の母親が状況を説明する。

「それは不思議なこともあるものですね。ルーラの魔法と似ているような気もしますが・・・。」

「とんでもございません。あの子は魔法など使えませんし、キメラの翼も持ってはおりませんもの。」

「他に何か手がかりになりそうな話の聞ける場所はありますか?」

「学校ならもしかしたら・・・。息子が通っていたので。」

「では、学校の方で話を聞いてみます。何か分かったらお知らせしますので、ご安心下さい。」

「ありがとうございます、戦士様。」

学校の校庭で先生らしき人物を見かけたライアンは、そちらへ近付いて行った。

「ここは学校です。いなくなった宿屋のププルもここの生徒でした。」

「何か手がかりになりそうなことは分かりませんか?」

「残念ですが、私には何も・・・。」

「そうですか。」

結局学校では何も手がかりが得られず、ライアンは宿屋の方へと歩いて行った。

「けしからんことに、夜になると宿屋のフロを覗くヤツが決まって現れおる。羨ましいこっちゃ。わしも逃げ足さえ速ければのう・・・・・・。」

宿屋の前をうろうろしていた老人に話を聞いたのだが、全く関係のない話しかしてくれなかった。

しかも老人のしようとしている行為は犯罪では、とライアンは苦笑した。

「やや、ライアンではないか!?お主もやっとイムルの村にやって来たか!」

先程洞窟の中で出会った戦士が、ライアンを見つけて近付いて来た。

「子供の行方については、未だ何の情報も得てはいないが・・・・・・。」

腕組みをしながら彼は言葉を続ける。

「私はこの地の西にある塔が怪しいと思うのだが、あそこにはどうやって入ればいいのだ?」

「入り口が見つからないのですか?」

「そうなのだ。何もかも、分からないことだらけだ。」

(入り口のない洞窟か。やはり何か秘密がありそうだな。)

ライアンがそう考えていると、1人の少女が話し掛けてきた。

「おじちゃん、バトランドの人?」

「ああ、そうだが。」

「地下の牢屋にいるおじちゃんは、バトランドに住んでたんだって。」

「牢屋に?一体何をしたんだ?」

「知らない。」

そう言って少女はどこかへと走って行ってしまった。

(先程学校の先生は、宿屋の息子もいなくなったと言っていたな。宿屋の主人に話を聞いてみるか。)

ライアンが宿屋へ行くと、主人は気になる話をしてくれた。

「うちのヤツが言うには、ププルが消える時、おかしなクツで遊んでいたそうなんですが・・・・・・。」

「おかしな靴?それは気になりますね。」

やはり子供達は何か秘密を持っていたらしい。

ライアンはそう、確信めいたものを感じていた。

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