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気が付くと、目の前は真っ暗だった。
「ここどこ?ぼく、しんじゃったのかな?」
辺りを見回すと、真っ赤な2つの明かりが見えた。
「ぐるるるるる・・・。」
そして聞きなれない生き物らしきものの声が聞こえた。
「なにっ?なにかいるの?」
慌てて立ち上がろうとすると、やや低めの穏やかな声が聞こえてきた。
「待ちなさい。このまま外へ出ては、また落ちてしまうぞ。」
「え?だれかいるの?ここはどこ?」
「やれやれ、人間はいっぺんにいろいろなことを尋ねてきて困る。」
「全ての生き物を照らす光よ 我が元に!」
「まぶしい!」
その途端、辺りが明るくなった。
今まで真っ暗だったせいで、光が目に突き刺さるようだった。
しかし間もなく目が慣れ、ルークにも回りの様子が見えるようになってきた。
ルークの前に現れたのは、見事なサファイア色に輝く鱗を光らせた竜の姿だった。
目にしたものの意外さに驚きながらも、嬉しさの方が先立ってルークは思わず叫んだ。
「えっ?もしかして・・・ほんもののりゅう?すごい!かっこいいなあ!」
「私のことが怖くないのか?人間の子よ。」
「えっ?なんで?だってぼく、りゅうきしになるんだよ。」
「竜騎士だと?」
「うん。だからぼく、まいにちくんれんしているんだ。」
「ほう、こんなに幼い子どもが竜騎士とはな・・・。はははははっ。」
「わらうなっ!」
「ふふふ、すまなかったな。そうか。お前が竜騎士にな。」
そう言ってまじまじとルークの顔を覗き込んだ竜は、何かに思い当たったように考え込んだ。
「お前の目は前に見たことがあるぞ。」
「?」
「そうだ、ガルドの目と一緒だ。」
「がるど?」
「ああ、かつて私はある竜騎士と常に共にあった。それがガルドだったのだ。」
「がるどさんはどうしたの?もういっしょじゃないの?」
「ガルドは立派な竜騎士だった。竜騎士の中の竜騎士だと言えた。私との相性も最高だった。今までのどんな人間よりも・・・。」
ここで一旦言葉を切ると、竜は沈んだ調子で再び話し始めた。
「しかし、ガルドは若くして亡くなってしまったのだ。勇敢に戦い抜いて・・・。」
「なくなった?いなくなったの?」
ルークには”亡くなる”という言葉の意味がよく分からず、物がなくなったようなことだと思って尋ねた。
「そうだ。もう二度と帰っては来ない。」
「かえってこないの?かわいそうだね。」
そう言ってルークは精一杯背伸びをし、腕をできる限り伸ばすと、竜の頭をなでようとした。
その様子を察した竜はルークの手が届くように、首を下げてやった。
「だいじょうぶ。こんどからぼくがおともだちになってあげるよ。」
「ありがとう。そういえば名前を聞いていなかったな。」
「るーくだよ。」
「ルークか。良い名前だ。私の名前はスターサファイアだ。」
「す・・・いあ?」
「スターサファイアだ。」
「ふぁい?うーん、むずかしいよ。」
「そうか、幼いルークには少し難しいかもしれないな。よし、ファイでいいよ。」
「ふぁい?これでぼくとふぁいはおともだちだよ。」

安心したのか再び眠りについてしまったルークを見つめながら、スターサファイアは考えにふけっていた。
(不思議な子だ。もう二度と人間には関わるまいと思っていたのに・・・・。)
かつて主と騎竜としてではなく、親友として常に共にあった竜騎士ガルド。
彼は、スターサファイアがこれまで出会ったどの竜騎士とも異なっていた。
少しも竜を従わせようとはしなかった。
常に自分とは対等の立場で、接してくれた。
そのため、いつしか固い友情で結ばれるようになっていったのだ。
お互い、なくてはならない存在になっていた。
(似ている。ガルドと・・・。周りを安心させる穏やかな雰囲気が・・・。そして希望に満ちた瞳の輝きが・・・。ひたすら前を見続ける、力強さが・・・。)

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