2 |
気が付くと、目の前は真っ暗だった。 「ここどこ?ぼく、しんじゃったのかな?」 辺りを見回すと、真っ赤な2つの明かりが見えた。 「ぐるるるるる・・・。」 そして聞きなれない生き物らしきものの声が聞こえた。 「なにっ?なにかいるの?」 慌てて立ち上がろうとすると、やや低めの穏やかな声が聞こえてきた。 「待ちなさい。このまま外へ出ては、また落ちてしまうぞ。」 「え?だれかいるの?ここはどこ?」 「やれやれ、人間はいっぺんにいろいろなことを尋ねてきて困る。」 「全ての生き物を照らす光よ 我が元に!」 「まぶしい!」 その途端、辺りが明るくなった。 今まで真っ暗だったせいで、光が目に突き刺さるようだった。 しかし間もなく目が慣れ、ルークにも回りの様子が見えるようになってきた。 ルークの前に現れたのは、見事なサファイア色に輝く鱗を光らせた竜の姿だった。 目にしたものの意外さに驚きながらも、嬉しさの方が先立ってルークは思わず叫んだ。 「えっ?もしかして・・・ほんもののりゅう?すごい!かっこいいなあ!」 「私のことが怖くないのか?人間の子よ。」 「えっ?なんで?だってぼく、りゅうきしになるんだよ。」 「竜騎士だと?」 「うん。だからぼく、まいにちくんれんしているんだ。」 「ほう、こんなに幼い子どもが竜騎士とはな・・・。はははははっ。」 「わらうなっ!」 「ふふふ、すまなかったな。そうか。お前が竜騎士にな。」 そう言ってまじまじとルークの顔を覗き込んだ竜は、何かに思い当たったように考え込んだ。 「お前の目は前に見たことがあるぞ。」 「?」 「そうだ、ガルドの目と一緒だ。」 「がるど?」 「ああ、かつて私はある竜騎士と常に共にあった。それがガルドだったのだ。」 「がるどさんはどうしたの?もういっしょじゃないの?」 「ガルドは立派な竜騎士だった。竜騎士の中の竜騎士だと言えた。私との相性も最高だった。今までのどんな人間よりも・・・。」 ここで一旦言葉を切ると、竜は沈んだ調子で再び話し始めた。 「しかし、ガルドは若くして亡くなってしまったのだ。勇敢に戦い抜いて・・・。」 「なくなった?いなくなったの?」 ルークには”亡くなる”という言葉の意味がよく分からず、物がなくなったようなことだと思って尋ねた。 「そうだ。もう二度と帰っては来ない。」 「かえってこないの?かわいそうだね。」 そう言ってルークは精一杯背伸びをし、腕をできる限り伸ばすと、竜の頭をなでようとした。 その様子を察した竜はルークの手が届くように、首を下げてやった。 「だいじょうぶ。こんどからぼくがおともだちになってあげるよ。」 「ありがとう。そういえば名前を聞いていなかったな。」 「るーくだよ。」 「ルークか。良い名前だ。私の名前はスターサファイアだ。」 「す・・・いあ?」 「スターサファイアだ。」 「ふぁい?うーん、むずかしいよ。」 「そうか、幼いルークには少し難しいかもしれないな。よし、ファイでいいよ。」 「ふぁい?これでぼくとふぁいはおともだちだよ。」 安心したのか再び眠りについてしまったルークを見つめながら、スターサファイアは考えにふけっていた。 (不思議な子だ。もう二度と人間には関わるまいと思っていたのに・・・・。) かつて主と騎竜としてではなく、親友として常に共にあった竜騎士ガルド。 彼は、スターサファイアがこれまで出会ったどの竜騎士とも異なっていた。 少しも竜を従わせようとはしなかった。 常に自分とは対等の立場で、接してくれた。 そのため、いつしか固い友情で結ばれるようになっていったのだ。 お互い、なくてはならない存在になっていた。 (似ている。ガルドと・・・。周りを安心させる穏やかな雰囲気が・・・。そして希望に満ちた瞳の輝きが・・・。ひたすら前を見続ける、力強さが・・・。) |