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(いよいよ明日、出発だ。) ルークは竜騎士になるべく、この町を出る。 5つの頃にこの土地に越してきて以来、ルークは1日たりとも鍛錬を欠かしたことはなかった。 (あの竜、どうしているかなあ?) 幼かったルークにはまだうまく名前を発音することができなかった、サファイア色に輝く鱗を持った竜。 (きっと僕のことを嘘つきだと思っているだろうなあ。名前は・・・ファイ?えーっと、何て言ったっけ?) サファイア色に輝く鱗だけは未だによく覚えている。 (絶対に竜騎士になってみせるぞ!) そう固く決心しながら、ルークは眠りについた。 「じゃあ母さん、行って来ます。」 決心が鈍らないうちにと、ただそれだけを言い残してルークは家を出ようとした。 「待ちなさい。」 母親が奥の引き出しから何やら取り出すと、ルークの目の前に差し出した。 「これは?」 母親が差し出したのは、真っ赤なルビーの中央に小さなサファイア色の鱗のような物が埋め込まれたものであった。 そのルビーには紐が通され、首に掛けることができるようになっていた。 「お守りよ。あなたが立派な竜騎士になれるように・・・。これを持って行きなさい。」 「何でこんな立派な物が・・・。」 「これはお父さんの形見よ。大切になさい。」 「父さんの?」 「さあ、これ以上話をしていたら辛くなるわ。早くお行きなさい。」 「うん、分かったよ。じゃあ、母さんも元気で・・・。」 「頑張ってきなさい。」 「はい。行って来ます。」 ルークは母親に背を向けると、早足で歩き始めた。 何度か後ろを振り返ろうと思ったが、涙が出そうだったのでそのまま歩き続けた。 ルークの胸では赤いサファイアのペンダントが、熱い陽射しを受けて輝いていた。 |