12
次の朝早く、ルークは来た道を戻って行った。
幼い頃のことで、どこをどのように通ってキャンドルに移り住んだのか覚えていないはずだったが、何故かこの道を行けばあの時の竜に出会えるという確信があった。
ルークは3日かけてかすかに見覚えのある場所へと辿り着いた。
(たぶんここだ。でもどうやったらあの竜に会えるんだろう?とにかく、あの時の崖の方まで行ってみよう。)
ルークは記憶の糸をたぐり寄せるようにして、何とかそれらしい崖へとやって来た。
(あっ、あの花は・・・・)
ルークが目にした花は、確かに幼き日に竜と出会った時に咲いていたものと同じであった。
(あれだ!あそこに行ってみよう!)
ルークの手は無意識のうちにその花へと伸びていた。
あの時よりもずっと近い位置に見えた。
(これなら届く。)
しかし・・・。

「あーーーーっ。」
幼き日の光景が甦る。
バサッ!
ルークは何かが羽ばたくような音を聞いた気がした。
トスンッ!
地面に叩きつけられると思った瞬間、ルークの視界一面に輝くような青い光が見えた。
「あれ?」
「気をつけるのだな、人間の少年よ。」
「あ、あなたは・・・。」
「おや?その瞳、見覚えがあるぞ。もしや、あの時の子どもか?」
「・・・・・・・ふぁい?そうだ、ファイだ!会いたかったよ!」
「私もだ、ルーク。」
「僕を覚えていてくれたんだね。」
嬉しさのあまり竜の首に飛びついたルークは、すぐに沈んだ面持ちになった。
「・・・・・・ごめん、ファイ。あの時、僕は約束を破ってしまった。」
「なぁに、あの頃は戦乱が激しかった。大方、安全な地を求めて移住して行ったのだろう。」
「・・・・・・うん。」
「本当は私も後を追いたかったのだが、どうしてもこの土地を離れる決心がつかなかった。」
「どうして?」
「私の話した竜騎士のことを覚えているか?」
「確か、ガルドとか言う?」
「そうだ。ガルドが囮となってやって来た土地がここだったのだ。そしてガルドが亡くなったのも・・・。」
「僕、何となくだけど覚えてるよ。ガルドさんは、みんなの命を助けるために、竜騎士として立派な最後を遂げたんだよね?」
「・・・・・・ああ。」
「僕はね、小さい時からずっと竜騎士に憧れていたんだ。」
ルークは自らの竜騎士に対する思いを語った。
「実は今、ラスティア竜騎士隊の入隊試験を受けているところなんだ。」
「そうか。」
「それで、パートナーの竜を探して連れて行くことが第4次試験合格の条件なんだ。」
「ああ、そうだったな。」
第4次試験の内容を知っているかのような竜の様子に何の疑問も持たずに、ルークは言葉を続けた。
「できればファイにパートナーになって欲しいと思ってやって来たけど、ファイにとっては今でも大切なパートナーなんだよね、ガルドさんは・・・。」
「そうだ。私はガルドを失ってから、もう二度と人間に関わるのはやめようと思っていた。」
「うん、そうだよね。分かった。別の竜を探すよ。僕にはこのお守りがあるから、きっとうまくいくよ。」
そう言って懐からお守りを取り出したルークは、その場を立ち去ろうとした。
「!?」
ふとルークの手元に目をやった竜は信じられない物を目にした。
「ルーク!それは?それを一体どこで手に入れた!?」
今までの穏やかな様子とは違った激しい声音に驚いたものの、ルークははっきりと答えた。
「これは父さんの形見なんだ。僕が生まれる前に病気で亡くなったらしいんだけど・・・。」
「病気で亡くなった?それを私によく見せてくれないか?」
「いいけど・・・。そういえば、このお守りに埋め込まれている鱗みたいな物、ファイの鱗に似ているよね?」
そう言いながらルークは、母親から手渡されたお守りをスターサファイアに差し出した。

BackNext

DRAGOON TOPへ