2
「きゃーっ。」
買い物を済ませてパンの入った袋を抱えていると突然、女性の悲鳴が聞こえてきた。
(何だろう?)
リュートは声のした方へ急いだ。
すると目を背けたくなるような光景が広がっていた。
見渡す限りの血の海である。
何人もの人間が、動かぬ屍となって転がっていた。
「これは・・・。」
思わず胸の前で十字を切った彼の前に、全身を血で染めた少年が姿を現した。
漆黒の闇のような毛髪は、リュートの陽の光をそのまま集めたようなそれとは対照的である。
(彼も怪我を・・・?)
「きゃーっ。」
手当てをしなければと近付こうとすると、少年は悲鳴の主に気を取られたのか、そちらの方へ向きを変えた。
少年の手に握られているナイフが煌いた。
「危ないっ!」
リュートは思わず女性に向かって飛び出していた。
パンが辺りに散らばる。
「つっ。」
少年の刃がリュートの脇腹に傷を付けた。
「きゃーっ。」
再び女性が悲鳴を上げたが、リュートの意識はだんだんと遠のいていった。

目を開けると、そこは見知らぬ場所だった。
「ここ・・・は?」
体を起こそうとすると、脇腹に激痛が走った。
「つっ。」
力が入らずに、再び体が沈み込んだ。
熱があるのだろうか。
全身がひどく熱い。
すると何者かがリュートの体を押さえ込んだ。
辺りは暗く、よく見えない。
やがてその何者かはリュートの脇腹の包帯を外すと、口に含んだワインを傷口に向かって吹き出した。
「痛っ。」
痛みに声を上げたリュートを無視するように、その者は乾いた布を傷口に当てると手際良く包帯を巻き始めた。
「だ・れ・・・?」
わずかに聞こえるくらいの声で尋ねたが、返答が返ってくることはなかった。
そのままリュートは再び眠りに落ちた。

BackNext

FEELING〜魂よ、永久に安らぎを〜 TOPへ