第1章 運命の息吹

「ボス!連中、城にこもったようですぜ。」

「フン、かつてはリキア一の騎士と謳われたフェレ侯エリウッドも、さすがに病にゃ勝てねえってか?」

部下の報告を受けたダマスはにやつきながら呟いた。

「へへへ、ベルンが攻めて来たからこの辺りは手薄になっているって、ボスの読みはズバリっすね!」

「当たり前じゃねえか。だが、いつ助けが来るとも限らなねぇ。ヤロウ共!その前にさっさと城の連中を片付けちまえ!そうすりゃ、城にあるお宝は取りたい放題だぜ。」

「へっへっへ、城の中だけがお宝のありかじゃないってね。あっちが騒いでる間に、オレたちゃ村でも襲うとするか。」

部下に城の連中の相手を任せたまま、ダマスは一部の部下を率いて村を襲うために出掛けて行った。

「エリウッド様、大変です!ボルム山の『賊』共がすぐそこまで・・・。」

「そうか・・・くっ。私がこのような体でなかったら好きにさせぬものを・・・ゴホッゴホッ。」

「おじ様・・・。」

病を患っているにも関わらず無理を続けるエリウッドに、少女が心配そうに声を掛けた。

「リリーナ、お前は隠れていなさい。もうすぐここも戦場になる。」

「いえ、私も・・・私も戦います!」

「馬鹿を言ってはいけない。お前にもしものことがあったら、私はヘクトルに顔向けができん。」

「お父様に?で、ですが・・・。」

「大丈夫だ。ロイも近くまで戻って来ているはず。それまで持ちこたえれば、何とかなるだろう。マリナス!」

先程報告を受けた部下を再び呼び寄せ、エリウッドは命を伝えた。

「ロイ達の元に使者をやり、急を知らせろ!」

「は、は、はいっ。」

危急の事態を知らせるために危険を顧みず走った騎士は、息を乱したままロイの元へと姿を現した。

「ランスじゃないか。どうしたんだ?慌てて。」

「ロイ様!『賊』共が城を取り囲み、攻撃を!!」

「なっ、何だと!エリウッド様達はどうされたんだ?」

赤い鎧の騎士が動転して叫んだ。

「今、城内に敵をおびき寄せて防いでおられるが、あのお体では・・・。」

その会話をそれまで黙って聞いていた騎士が、身を乗り出してランスに尋ねた。

「ラ、ランス殿とやら!リリーナ様は?ご無事だろうか?」

「!オスティアの方か。リリーナ殿も城におられる。エリウッド様のお側にいる限り、心配はないが・・・。それもいつまでも続くものではない。」

「しまった・・・。こんなことになるなら、リリーナを先に行かせるんじゃなかった。」

「ロイ様、悔やむのは後です。とにかく城へ!」

ロイとは乳兄弟として育った少年、ウォルトがロイを励ますように言った。

「ウォルトの言う通りです。ロイ様、急ぎましょう!」

エリウッドの父親の代よりフェレ家に仕えている老騎士のマーカスも、言葉を続けた。

「うん。さあ行こう、みんな。父上達を救出するんだ!」

こうしてロイ達は皆を救出するべく、フェレ城への道のりを急いだ。

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