アゼル
ようやくシグルドに追いついたヴェルトマーのアゼルはシグルドに話し掛けた。 アゼル 「シグルド公子、ご無事で何よりです。」 シグルドはアゼルを見ると驚いたように言った。 シグルド 「君はヴェルトマーのアゼル公子?どうしてここへ?」 アゼル 「ヴェルダンとの戦いに少しでもお役に立ちたいとレックスと共に駆けつけました。僕達も共に戦うことをお許し下さい。」 シグルドは少し考え込むようにして言った。 シグルド 「無論願ってもない事だが、君の兄上・・・アルヴィス卿はご承知なのか?」 アゼル 「いえ・・・兄は国王側近として近衛軍の指揮を任されています。僕も王都バーハラを離れてはならぬときつく言われておりました。」 シグルド 「そうだろうな。しかしそれでは後からお叱りを受けるのではないか?」 アゼルは少し間をおくと、決心したように口を開いた。 アゼル 「言いにくいことですが・・・僕は兄が恐ろしいのです。あの人の側にいると息がつまりそうで・・・。それに・・・出来の悪い弟などあの人にとっても、足手まといなだけですから・・・。」 シグルド 「そうか・・・いろいろと訳がありそうだね。でも私は君が来てくれて心強いよ。君さえ良ければいつまでもいて欲しい。」 アゼル 「はい!」 シグルドに屈託のない笑みを向けられ、アゼルは力強く返事をした。 シグルド 「私は一足先行く。君も気をつけて・・・。」 アゼル 「シグルド公子も・・・・。」 シグルド 「では、また後で会おう。」 そういい残すと、シグルドは愛馬に乗って駆けて行ってしまった。 アゼル 「やっぱり噂通りの人だな。兄とは全然違う・・・。」 シグルドに出会えて良かったと、心の底から考えるアゼルであった。