心 -闇と光-

「セシル!」

その声に振り返ると、白魔道士のローザが立っていた。

「良かった、無事だったのね。あまり急な任務だったので心配したわ。」

「無事さ、僕らは・・・・。無抵抗な魔道士相手に傷など負いはしない・・・・。」

そう言ってセシルはその場を立ち去ろうとした。

自らの犯した罪は、ローザの微笑みを見ても消え去りはしない。

「セシル!」

ローザの呼び止める声が聞こえた。

「後であなたの部屋に行くわ・・・・。」

「ああ・・・・。」

セシルは短い一言を返した。

ローザはもう一度セシルを振り返ってから、自室へと戻って行った。

再びセシルが西の塔へと向かおうとすると、夜にも関わらず威勢の良い声が聞こえてきた。

「戻ったかー、セシル!」

手を振ってみせると、急いでセシルの元へとやって来た。

セシルには馴染み深い飛空艇整備士の親方、シドである。

「ローザが心配しとったぞ!ローザを泣かせたらこのワシが許さんからな!ところでワシのかわいい飛空艇は無事か?お前の部下は荒っぽくていかん。」

しかしセシルの様子がおかしいのを察したのか、シドは口調を幾分やわらげて話し掛けてきた。

「何じゃ、うかない顔して!」

「実は、シド・・・・。」

セシルは一連の出来事をシドに語った。

「何じゃと?幻獣の討伐に?お前以外に赤い翼を仕切れるヤツがおるか!全く陛下はどうされたんじゃ。新型の飛空艇を作れとおっしゃるが・・・・。ワシは飛空艇を人殺しの道具になぞしたくないんじゃ!街の者も不思議がっとる・・・・。」

やはり皆が陛下の変わり様に疑問を感じていたのだ。

「ともかく気をつけてな!幻獣なぞ、お前の暗黒剣で一撃じゃ!ワシは家に帰る。最近帰っとらんので娘がうるさくてな!」

そういい残すと、シドは家に帰って行った。

- 完 -

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