シドの夢

地下には兵士達を訓練するためのトレーニングルームがあった。

セシルとカインはトレーニングルームへと足を向けた。

「ここはミシディアへと通じるデビルロード。かつてはこれを利用し、貿易などが盛んでしたがミシディア側が封印してしまったらしく、今では使えません。この地下はトレーニングルームです。」

兵士が2人にこう教えてくれた。

試しにスイッチを動かして中へと入ってみたものの、やはりミシディア側より封印されていて使うことができなかった。

トレーニングルームでは戦闘で生き残るためのノウハウをしつこいくらいに叩き込まれる。

「持ちきれなくなった荷物はチョコボの森のでぶチョコボに預ける!チョコボ臭かったらギザールの野菜だ!」

「無茶な戦闘は命取り!まずいと思ったら迷わず逃げること!」

「戦闘では素早い決断が必要!」

「体力のない者は後列に下げること!」

兵士達は口々に戦闘の心得を唱えていた。

「そろそろミストへ向かうか?」

「待ってくれ、カイン。」

「ん?」

「シドに挨拶をしていきたい。」

「そうか、ではシドの家に行こう。」

「すまない、カイン。」

「いいさ。お前はシドにはお世話になっているからな。」

シドの家の本棚には沢山の本が詰まっていた。

『浮力とその原理』

『操船技術の歴史』

いかにもシドが好きそうな本に混じって『世界の鳥大図鑑』なんていうタイトルも見られた。

恐らく娘の本なのであろう。

「折角来て頂いたのに、すみません。お父さんったらまた徹夜で!いつまでも若いつもりなんだから・・・・。セシル様からも言って下さい。町のみんなは王様や兵士のことを悪く言いますけど、あなたのようないい人も一杯いるのに・・・・。お父さんなんか、そのことでしょっちゅう町の人ともめてるんです。」

当のシドはベッドでぐっすりと眠っていた。

「グガー、グガー!できた。新型エンジンじゃ!フガ、フガ・・・・。」

徹夜がこたえているのであろう。

しかし夢の中でも彼は仕事をしているようだった。

「寝ているのなら仕方がないな、セシル、行こう。」

「あの、シドには無理をしないように言っておいて下さい。シドあっての・・・赤い翼ですから。」

一瞬飛空艇部隊長の任を解かれたということが頭をよぎったが、セシルは言葉を続けた。

「はい、ありがとうございます。セシル様。」

そしてセシルとカインの2人は誰からも見送られることなくバロンの町を後にした。

- 完 -

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