ミストの村の少女

ミストの村に辿り着いた2人が足を踏み入れた途端、指輪に変化が訪れた。

「指輪が光る・・・・!?」

セシルが驚いているうちに、辺りは瞬く間に炎に包まれてしまった。

「これは!」

カインも驚く他はない。

「このために僕らはここまで・・・・。」

セシルから力が抜け、呆然と座り込む。

「この村を焼き払うため・・・・。」

カインも呆然と炎を見つめている。

「何故だあッ!バロン王ーッ!」

セシルはこらえ切れなくなって叫んだ。

「エーン、エーン・・・・。」

どこからか少女の泣き声が聞こえてきた。

「あれは?」

声を頼りに近付いて行くと、倒れている女性の側で1人の少女が泣いていた。

「お母さんのドラゴンが死んじゃったから・・・・お母さんも・・・・エッエッ・・・・。」

少女はひたすら泣きじゃくっている。

「!」

もしや先程のミストドラゴンが?

そういう考えに至ったセシルに向かって、カインが口を開いた。

「そういえば、聞いたことがある。魔物を呼び出す力を持つ者・・・・。確か、召喚士!」

「まさか僕達があのドラゴンを倒したから、この子の母親も・・・・。」

セシルが少女と母親に目を向けると、少女は警戒するように後ろへ下がった。

「じゃあ、お兄ちゃん達がお母さんのドラゴンを!」

「まさか・・・・君の母さんを殺してしまうことになるとは・・・・。」

セシルは激しく後悔していた。

「どうやら陛下はこの村の召喚士を全滅させるため、俺達をここまで・・・・。」

「何てことだ・・・・。」

「・・・・かわいそうだが、この子もやらねばならんようだな。」

カインが少女に1歩近付きながら言った。

「カイン!」

セシルが慌ててカインを制した。

「やらねば俺達がやられる!」

「子どもだぞ!」

「陛下に逆らえるか?」

「こんな殺戮を繰り返してまで、陛下に従う気はないッ!」

そう言ってセシルはカインに詰め寄った。

するとカインは柔らかな笑顔を向けた。

「フッ、そう言うと思ったぜ。1人でバロンを抜けるなんてさせやしないぜ。」

「カイン?」

「いくら陛下に恩があるとはいえ、竜騎士の名に恥じる真似をできるわけなかろう。」

「じゃあカイン、お前も・・・・。」

「だが、バロンは世界一の軍事国。俺達2人がいきがったところでどうにもなるまい。他の国に知らせ、援護を求めんとな。ローザも救い出さんと!」

「ありがとう、カイン。」

するとカインは顔を背けて呟いた。

「別にお前のためじゃないさ。」

「?」

「それよりここは危ない。早く村を出ないと。あの子はどうする?」

「僕らが連れて行くしかあるまい!」

2人は少女の元へ近付いて行った。

「さあ、ここは危険だ。僕らと一緒に・・・・。」

セシルが声を掛けると、少女は拒絶の反応を示した。

「嫌!」

少女が後ろへ下がるのにも構わず、カインは強引に近付いて行った。

「やむをえん。無理矢理でも!」

「近寄らないで!」

少女は更に後ろへ下がって行く。

「待ってくれ!」

セシルが足を踏み出すと、少女はパニックを起こして叫んだ。

「もう嫌あ!みんな!みんな大っ嫌い!もう嫌ーーーーっ!!」

途端に彼らの前に巨人が出現した。

立っていられないほどの地震が辺りを襲う。

そして激しい爆風に包まれた。

- 完 -

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