信頼

どれくらいの時間が経ったのだろう。

セシルが意識を取り戻すと、すぐ側に先程の少女が倒れているのが目に入った。

「良かった。この子は無事か・・・・。!!」

しかしほっとしたのも束の間。

辺りを見回してもカインの姿が全く見当たらなかった。

「カイン?カイン!」

何度か呼んでみたが、全く反応はなかった。

「いつまでもここにはいられない・・・・。この子を連れて逃げないと・・・・。カイン・・・・生きていてくれ!」

セシルは少女を抱き上げると、歩き出した。

途中モンスターに出会ったが何とか撃退し、砂漠の中で発見したオアシスの村カイポへと足を踏み入れた。

「この子を休ませないと・・・・。」

辺りを見回すと、1軒の宿屋を見つけた。

「いらっしゃいませ。おや、お嬢ちゃんの顔色が悪い。ささ、早く部屋へ!お代はいいからどうぞ!」

「すまない。」

宿屋の主人の好意に甘えて、セシルは早速少女をベッドで休ませてやった。

やがて気が付いた少女は、セシルを避けるように壁の方へと顔を背けてしまった。

「気が付いたね。」

「・・・・。」

「・・・・まだ名前を聞いてなかったな。」

「・・・・。」

「・・・・君の母さんは僕が殺したも同然・・・・。許してくれるわけはない・・・・。ただ、君を守らせてくれないか・・・・。」

「・・・・。」

セシルが何を話し掛けても、少女は終始無言だった。

もう夜も遅い。

セシルは諦めてベッドで眠りについた。

静寂を破り、突然大きな音をたてて扉が開く音が聞こえたかと思うと、兵士達がドカドカと部屋へ入って来た。

2人共、何事かと目を覚ますと隊長であるジェネラルがセシルに向かって言った。

「見つけたぞ、セシル!」

「!」

少女が怯えたように体を硬直させた。

「待ってくれ!バロン王は・・・・。」

セシルが王の名を出すと、ジェネラルは冷たく言い放った。

「その王のご命令だ。ミストの生き残りのその子どもを引き渡せば、許して下さるそうだ。ミストの者は、危険な存在らしいのでな!」

「何だって!?」

「!」

少女は声も出ない。

「さあ、その娘を渡せ!」

「断る!」

「王に逆らおうというのか?仕方がない。かかれっ!」

セシルは素早く剣を構えると、少女を後ろに庇った。

まずは兵士を1人斬り倒すと、続いて残りの2人も倒した。

「くそっ、陛下に逆らってただで済むとは思うなよ!」

ジェネラルはそう言い残して撤退して行った。

「ごめんなさい。あたしのせいで・・・・。」

セシルと2人きりになって初めて、少女が口を開いた。

「謝るのは僕の方だ。それも、謝って済むようなことじゃない・・・・。」

「でも、守ってくれた・・・・。」

「・・・・。」

「あたし・・・・リディア。」

少女はポツリと呟いた。

- 完 -

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