オアシスの町

次の日の朝を迎えた。

「よーし、出発だ!その前に、この辺りのことを知る必要があるな。」

セシル達はカイポで人々の話を聞くことにした。

「賢者のテラ様と娘のアンナは親1人、子1人で仲が良かったが、アンナが家出をしてしまってな・・・・。」

「この町には賢者様がいらっしゃるのですか?」

「はい。でも今はどこかに出掛けておられるようです。」

「そうですか。」

宿屋には道具屋も備えられていた。

「いらっしゃい!どんなご用件で?どれに致しましょう?」

「すみません。ちょっとこの辺りのことをお聞きしたいのですが。」

「ああ、それなら2階の酒場で聞いた方がいいですよ。」

「そうですか。ありがとうございます。」

セシル達は早速、2階の酒場へと向かった。

「何か張り紙があるわ。」

「なになに?『砂漠でかわききった喉に!カイポ特製ビール!』か。僕はビールは飲まないし、リディアにも無理だね。」

「うん。」

「あら珍しい。最近増えた魔物のせいで、お客もめっきりですの。」

酒場の女主人が言った。

「あの、この辺りのことについて知りたいのですが。」

セシルは近くにいた男性に声を掛けた。

「やあ、僕は旅の学者。ダムシアンの東のファブールへ研究に行きたいんだが、地下水脈に変な爺さんがいて通してくれないんだ。」

「お爺さんが?」

「そうだ。」

「そうそう!ダムシアンと言えば・・・。」

隣りにいた男性が会話に参加してきた。

「ダムシアンの東にあるアントリオンの洞窟には、王族しか行けねーらしい。俺達でも行けりゃ、いい商売になんだけどなー。」

「まずはダムシアンに行ってみようか?」

「うん。」

町中へ出ると、多くの人々で賑わっていた。

「もう少し話を聞いてから行こうか?」

「うん。」

セシル達は人々に話を聞いて歩くことにした。

「何でもバロンから来たきれーなねーちゃんが倒れてて、誰かの家に担ぎ込まれたらしーぜ。」

「えっ?」

セシルの顔色が変わった。

「どうしたの?セシル。」

「いや、何でもないよ。」

セシルはそう言って微笑んだが、バロンという言葉を聞いて心中穏やかならぬものを感じていた。

(他にもバロンから人が?)

「セシル、大丈夫?」

顔色を青ざめさせているセシルを見て心配になったのか、リディアが不安そうな目を向けてきた。

「ごめん、リディア。本当に何でもないんだ。」

いつの間にか考え込んでいたセシルは、リディアの言葉に我に返ると引き続き、人々の話を聞いて回った。

「地下水脈なら北東だよ。でも最近8匹の水蛇が出るんだって!」

少年の言葉を聞いて、リディアが言った。

「地下水脈って、お爺さんがいる所でしょ?」

「そうだった。お爺さんは大丈夫だろうか?」

少し不安を覚えた2人であったが、引き続き話を聞くことにした。

「アンナは愛する人ができたの。でもテラ様が許さなかったばかりに、このカイポを飛び出して・・・・。」

「アンナ、かわいそう。」

リディアがぽつりと言った。

セシルもいつの間にか、愛する女性のことを思い浮かべていた。

- 完 -

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