剣士アルガス


ラムザ達はイグーロス城の中庭に来ていた。
剣士アルガス 「・・・オレの家も昔はベオルブ家みたいに皆から尊敬される家柄だったんだ。」
「五十年戦争の時に、オレの爺さんが敵に捕まってなぁ・・・。」
「爺さん、自分だけ助かるために仲間を敵に売ったんだよ。そう、自分の命を救うためにね・・・。」
「でも、敵の城を出た途端に背後から刺されて死んじまった・・・。オレみたいな騎士見習いにな。」
「そんな話を、爺さんの仲間だった一人が命からがら脱出して来て方々に吹いて回ったんだ。」
「もちろん、オヤジは信じなかったよ。でもな、みんなその話を信じた。そして、みんな去って行った・・・。」
アルガスはそう言うと、小石を拾って水の中へと放り投げる。
剣士アルガス 「身分か・・・・・・。確かに、オレ一人じゃダイスダーグ卿には会えんよなぁ・・・。」
アルガスがうつむく。
若い娘の声 「兄さーん!」
3人共、声のした方を振り返る。
剣士ディリータ 「ティータ!」
剣士ラムザ 「アルマ、ザルバッグ兄さん!」
アルマが手を振っている。
ティータ、アルマ、ザルバッグの3人がラムザ達の元へとやって来る。
アルマ 「ラムザ兄さん。戻ってお出でだったのね。」
剣士ラムザ 「お久しぶりです、兄さん。」
聖騎士ザルバッグ 「聞いたぞ。ガリランドでは盗賊共を蹴散らしたそうだな。」
「それでこそベオルブ家の一員だ。亡き父上も喜んでおいでだろう。」
剣士ラムザ 「・・・有り難うございます。」
聖騎士ザルバッグ 「ふふっ、相変わらずだな。こんな言葉じゃ、素直に喜べんか。」
「ディリータ。たくましくなったな。お前の活躍の話も聞いたぞ。ティータが嬉しそうだった。なぁ?」
ティータ 「ディリータ兄さん。お元気そうで何よりです。」
剣士ディリータ 「ティータこそ元気そうで良かった。学校には慣れたか?」
ティータ 「ええ、皆さん、とても良くして下さるので・・・。」
聖騎士ザルバッグ 「ゆっくり話していたいところだが、これから盗賊狩りなんだ。すまんな。」
剣士ラムザ 「ご武運を。」
ザルバッグは行きかけて立ち止まる。
聖騎士ザルバッグ 「・・・骸旅団から身代金の要求があった。」
剣士アルガス 「何だって!?」
ザルバッグが振り返る。
聖騎士ザルバッグ 「・・・どうも腑に落ちないことがある。」
「骸旅団は反貴族を掲げるアナーキストだが、貴族やそれに仕える者達以外には手を出さない義賊だという。」
「そんな奴らが金目当てで侯爵殿を誘拐したとは考えにくいな。」
剣士アルガス 「馬鹿な!奴らはただのならず者だ!」
聖騎士ザルバッグ 「情報収集のために放った”草”の一人が戻って来ない。」
「大事に巻き込まれたと考えられるが”草”如きに捜索隊を出す必要はないと重臣の方々はおっしゃるのだ。」
剣士ラムザ 「どこで消息を絶ったんですか?」
聖騎士ザルバッグ 「ガリオンヌの東、ドーターという名の貿易都市だ・・・。」
「・・・城の警護なんぞ、退屈だぞ。そう思わんか?」
そう言い残してザルバッグが立ち去って行く。
剣士ディリータ 「ティータ、すまない。僕らは行くよ。」
ティータ 「私のことなら心配しないで。自分のことだけ考えてね。」
ティータとディリータはしっかりと抱き合う。
剣士ディリータ 「大丈夫。無茶はしない。必ず戻って来るからいい子でいろよ。」
ディリータはアルガスの方へと歩いて行く。
剣士ディリータ 「さぁ、行こうぜ、アルガス。」
アルガスとディリータが去って行く。
ラムザも後から行きかける。
アルマ 「ティータはああ言ったけど、ほんとは・・・・・・。」
剣士ラムザ 「ティータがどうかしたのか?」
アルマ 「身分が違うって、学校でいじめられることが多いのよ。」
剣士ラムザ 「・・・・・・・・・。」
アルマ 「ごめんなさい。兄さん。余計な心配させちゃって。」
「ティータのことは大丈夫よ。私がついているから。安心して。」
剣士ラムザ 「心配なんてしてないさ。でも、あんまり無理するなよ。」
アルマ 「兄さんこそ、周りの期待に応えようと何でも背負い込みすぎよ。」
「兄さんは兄さんなんだから、ベオルブの名に縛られることはないわ。」
剣士ラムザ 「まるで、母さんみたいな言い方だな。ははははは。」
そう言い残してラムザが去って行く。
アルマ 「ラムザ兄さん・・・・・・。」

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