帰宅

さすがに首都だけあって、グレッグミンスターは立派な町であった。

町の中央には噴水があり、美しい風景をかもし出している。

マクドール親子は町の中でも大きく立派な家へと入って行った。

彼らが玄関へと足を踏み入れた途端に、慌てて走って来た者があった。

シバが幼い頃から仕えてくれているグレミオである。

「お、お、お帰りなさい、坊っちゃん。ど、ど、どうでした、うまくいきました?皇帝陛下の前で失敗しませんでした?坊っちゃん、グレミオはもーーーーーーう心配で、心配で・・・。でも大丈夫だったみたいですね。」

立て続けにまくしたてるグレミオに苦笑しながらテオが言った。

「そんなに心配するなグレミオ。」

「あ・・・!ああ・・・テオ様。いたんですか。」

「いたんですかとは何事だ。お前はシバのこととなると夢中だからな。」

「す、すいません、テオ様。そうそう坊っちゃん、テッド君がお祝いに来てますよ。あ!シチュー!シチュー!」

そう言うとグレミオは、慌てて厨房へと走って行った。

テオはとある用事を済ますために再び外へと出て行く。

残されたシバは、おいしそうな匂いに引きつけられ厨房へと向かうことにした。

「グ・レ・ミ・オ。」

「今、手が離せないんですよ。ここがシチューのうまさのヒケツなんです。」

ふといたずら心が芽生えたシバは、シチュー作りに夢中のグレミオの耳を引っ張ってみた。

「ぼ、坊っちゃーーーーん・・い、痛いですーー、やめてくださいよぉぉぉぉーー。」

「ははははっ。頑張ってね、グレミオ。」

とびきりの笑顔で立ち去るシバ。

どんなにいたずらをされても、グレミオはこの笑顔にいつも負けてしまうのであった。

シバは次にテオの部下のパーンの部屋へと向かった。

部屋の扉をそっと開けると、パーンはベッドの上で寝息をたてていた。

「ZZZZZZ・・・・」

「わっ!」

シバの声に、慌てて飛び起きるパーン。

「うわぁっ!わっ!わっ!わっ!わっ!ん?ん?あっ、坊っちゃん、もうお帰りになったんですか?夕食を待っていたらついウトウトと・・・・。あ、そうそう、皇帝陛下との謁見はどうでした?」

「うん。何とか無事に終わったよ。」

「それは良かったですね。さてと、夕食ができるまでもう一眠りするかな。坊っちゃんも疲れたでしょう。一眠りしてきたらどうです?」

「いや、大丈夫だよ。クレオの所に行ってくるね。」

シバはパーンの部屋を出ると、テオのもう一人の部下であるクレオの元へと向かった。

部屋の扉を開けると、クレオが近付いて来た。

「坊っちゃん。女性の部屋に入る時はノックしてからっていつも言ってるでしょう。まあ、私の部屋なら別にいいんですけどね。どうでした、謁見は?緊張しました?」

「もちろん緊張しっぱなしだったよ。」

「今日はいろいろあってお疲れでしょう。お部屋でお休みになってはいかがですか?」

「うん。その前にテッドに会わなくちゃ。」

シバが2階へ上がって行くと、待ち構えていたように親友のテッドが部屋から飛び出して来た。

「聞いたぞ!シバ!!皇帝陛下に会って来たんだろ!なあ、なあ、聞かせてくれよ。一生のお願いだからさぁ、な?皇帝陛下の話だよぉ。えーーっと、そこのお前の部屋へ行こうぜ!な?な?」

シバはテッドに強引に部屋へと連れて行かれてしまった。

シチューができ上がったらしくグレミオが2階へ上がって来ると、食堂へと入って行く。

シバの部屋へやって来ると、テッドは途端に真剣な顔で頼み込んだ。

「シバ、お願いがあるんだ・・。一生のお願いだよ。俺もさぁ、仲間に入れてくれよ。みなし子だった俺を拾ってくれたテオ様にさぁ、恩返しがしたいんだよ。な?」

その頃、パーンとクレオが2階へ上がって来て、食堂へと向かっていた。

親友の頼みに、シバは迷わずに答えた。

「もちろんOKだよ。」

「さっすが、親友!!心の友だぜ!ようし、本題だぞ!皇帝陛下ってどんなヤツだった?それからさぁ・・・噂の宮廷魔術師、ウィンディ様のことだよ・・。綺麗だったか?なぁ、なぁ、なぁ、なぁ・・・・。」

テッドは好奇心に目を輝かせながら矢継ぎ早に尋ねてきた。

「そうだな、皇帝陛下はさすがに一国の王だけあって威厳のある方だったなあ。ウィンディ様は噂通り、綺麗な方だった。」

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