初任務

シバ達は城の中庭へとやって来ていた。

そんなシバ達に声を掛けてきたものがあった。

「坊っちゃんは確かテオ将軍のご子息ですよね。」

「はい、そうです。」

「これからお城へ向かうのですか?」

「はい、今日が近衛隊の初任務なんです。」

「えっ、近衛隊の仕事を!さすがに、テオ様の息子さんだ。」

「そりゃあそうですとも!坊っちゃんはテオ様の血を引いているんですからね。」

嬉しそうに口を出すグレミオである。

城へ向かう途中、一向はまた別の男性に話し掛けられた。

「テオ将軍は本当は反乱軍退治に行くらしいぜ。解放軍なんて名乗っているが、奴らはただの反逆者さ。そのうち、この俺がのしてやるさ。はははははははは。」

男性から離れてからシバはグレミオに話し掛けた。

「父上は本当に反乱軍退治に行くのかな?」

「さあ、どうでしょう?でもテオ将軍なら立派に任務を果たして帰って来ますよ。」

「うん。あれ?どうしたんだろう?あの女の人。泥だらけだよ。」

「そうですね。このような場所で泥だらけになるなんて・・・。」

すると、侍女らしきその女性がプンプンしながら言った。

「ねぇ、聞いてよ。家畜小屋でドロかけられちゃったの。ひどいわ。えっ、家畜小屋?この先よ。」

その時、家畜小屋の方に視線を走らせていたテッドが言葉を発した。

「なあ、シバ。家畜小屋の方へ行ってみないかい?」

「えっ?うん、いいけど・・・。」

「やったね、俺あっちの方行ったことなかったんだ。」

家畜小屋の前でシバ達は見知らぬ女性のグチを聞かされる羽目になった。

「ちょっと聞いてよぉ。竜騎士が来るって言うから楽しみにしてたのに、こんなガキが来るなんて・・・。ああぁ、期待して損しちゃった。」

その時、近くにいた竜が大きな声で吠えた。

「うっわー。竜だよ。すごいなあ。」

目を見開くテッド。

すると側にいた少年が小馬鹿にしたように言葉を発した。

「何だよ、ジロジロ見るなよ。そんなに俺のブラックが珍しいのか?田舎もん。」

「何だってぇ!」

少年に今にも飛びかかりそうな勢いのテッドを何とか押さえると、グレミオが言った。

「まぁまぁ、抑えて下さい。それより、クレイズ様のお部屋に急ぎましょう。」

「そうだね、城内へ急ごう。」

城内へ入ったシバ達は城内の人間から様々な話を聞いた。

「あの黄金の皇帝、バルバロッサ様の元で働けるなんて、何とまあ素敵なことなんでしょう。夢のようだわ。」

夢見るような瞳で語る侍女。

「北の方で何やら起こってるらしいな。でも、テオ様が北へ出向くなら、安心というもんだよ。」

「そうだな。テオ様にお任せしておけば安心だ。」

クレオが頷く。

「新しい宮廷魔術師、ウィンディ様は亡くなったクラウディア様によく似ていらっしゃるわね。」

ところがこの後・・・・・・。

「君みたいなヒヨッ子が近衛隊の一員かい。世も末だねぇ。」

「なっ、なっ・・・・・・。」

グレミオの拳はプルプルと震え始めていた。

「グレミオ、抑えて、抑えて・・・。」

なだめるクレオ。

「ほう?坊主があの大将軍テオ様の息子ねぇぇ・・。まあ、頑張りなよ。」

「全く、どうして宮廷にこのような輩がいるんでしょうねえ。坊っちゃんに対して無礼にもほどがあります!!!」

「よく抑えたねえ、グレミオ。」

苦笑するクレオ。

「おやぁ、確か坊っちゃんは大将軍テオ様のところの・・・。大きくなりましたね。」

(そりゃあもう、私が手塩にかけて育てたんですから・・・。)

心の中でそっと考えているつもりのグレミオも既に顔はにやけていた。

クレイズの部屋へと辿り着いたシバは、早速初任務の内容を言い渡された。

「ふん。テオのこせがれか。遅かったな。いつまでもお坊っちゃん気分では困るぞ。お前の初仕事だ。一度しか言わんからよく聞いておけよ。グレッグミンスターの北東に、魔術師の島がある。ここに占い師のレックナート様が住んでいる。そこへ行って星見の結果をもらってくるのだ。んっ、お前らちゃんと聞いてるか?魔術師の島が何処にあるか言ってみろ。」

「グレッグミンスターの北東です。」

「ふん、一応、言うことは分かるようだな。」

クレイズは顎をしゃくりあげると言葉を続けた。

「ふん。話の続きだ。魔術師の島には船は出ていない。代わりに竜洞騎士団から竜騎士を呼んである。家畜小屋の前にいるはずだ。島までは竜に乗せてもらえ。それからレックナート様は宮廷魔術師ウィンディ様の妹にあたる方だ。失礼のないようにしろよ。」

「はい。」

「竜騎士は家畜小屋の前にいる。何?家畜小屋が何処かだってぇ?家畜小屋はこの城の何処かにある!それぐらい自分で探せ!私の手をわずらわせるな!分かったらとっとと行け!」

「そんなこと聞いてないでしょうがっ!!!」

「しっ、グレミオ・・・。」

クレオが注意を促す。

「はい。失礼致します。」

挨拶をすませるとシバ達は城外へと向かった。

<---Back◆◇◆Next--->

幻想水滸伝へ