魔術師の島へ

歩きながらパーンがブツブツと文句を言っている。

「坊っちゃんの初仕事だから張り切っていたのに・・・何だよ、おつかいかよ。俺たちゃガキじゃないんだぜ。何か、こうもっと血のたぎるような・・・。」

そんなパーンにクレオが言葉を掛ける。

「そう言うなパーン。それに”星見の結果”は国を治めるのに、大事な意味を持つ。お前が言うほど悪くない仕事さ。」

「そうですね、それにこの仕事なら危ない目に遭うこともないだろうし・・。あ、いえ、決して坊っちゃんが頼りないとかそういうわけではないですけど。」

慌てて取り繕うグレミオ。

「おいシバ、どうやら俺達竜に乗れるみたいだぜ。それに竜騎士にも会える!!いいなぁ竜騎士、かっこいいよなぁ。早いところ行こうぜ!」

テッドが目を輝かせながら言う。

シバ達は先程の家畜小屋の方へと向かった。

「竜騎士はどこだろう?」

キョロキョロと辺りを見回すテッド。

そのテッドの視線が竜を連れた少年のところで止まった。

「おい、ひょっとして・・・竜騎士ってさっきのムカつく奴のことじゃないだろうな。」

「そうみたいだね。竜を連れているのはあの人だけみたいだし・・・。」

シバがにっこりと微笑む。

「えーっ、俺、あんな奴と一緒はごめんだぜ!」

頬をふくらませるテッド。

「こんにちは。」

シバは少年の元へと近付いて行くと声を掛けた。

「僕はシバ。これから近衛隊の任務で・・・」

「あんたらが近衛隊の人達かい?俺は竜騎士見習いのフッチ。こっちは俺の騎竜のブラック。おい、ブラック、挨拶しろ。」

「ウォーン!」

「へへっ、かわいいだろ。あんたら魔術師の島まで行くんだってね。このブラックならひとっ飛びさ。」

自慢気に話すフッチの言葉に先程のことを思い出したのか、テッドがポツリとつぶやいた。

「何だ、竜騎士って言うから期待してたのにガキじゃないか。」

その言葉を聞き逃すフッチではなかった。

「何だって!!そういうお前だってガキじゃないか。」

「何だと!この俺がガキだって!!こう見えても俺は300年・・・」

「はい、はい、ケンカはそれぐらいにして早いところ出発しましょう。」

「離してくれよ、グレミオさん!こいつは俺のことガキって!!」

「やれやれ、先が思いやられるね。」

クレオがため息をつく。

とうとうパーンが我慢しきれずに口を挟んだ。

「フッチくん。機嫌を直して早いところ、乗っけてくんないかな。」

「ああ、それじゃあとっととブラックの背中に乗りなよ。」

シバ達はようやく竜の背中に乗ることができた。

「ようし、みんな乗ったかい?しっかり捕まってないと振り落とされるぜ。まあ、落ちてもいい奴が一人いるけどな。」

フッチは最後に一言付け加えるのを忘れなかった。

「なにーーーーー!!」

テッドが顔を真っ赤にして怒る。

「危ないねぇ。カゴの中で暴れるんじゃないよ。」

「ようし、行け!ブラック!!」

ブラックはゆっくりと羽ばたくと大きな一声を発した。

「ウオーン!」

ブラックは力強く羽ばたきながら大空を飛んでいく。

魔術師の島へと・・・。

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